M&A・事業承継・撤退

事業承継の方法|親族・従業員・第三者(M&A)への承継を比較

事業承継の方法は、親族内承継、従業員・役員承継、第三者承継(M&A)の3つです。後継者の有無、株式の移し方、資金と税金の負担で選びます。それぞれの進め方と、事業承継税制や遺留分の特例、外国人経営者が注意する点を解説します。

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TIMOA編集部
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2026年10月1日時点の制度に基づいています。

事業承継の方法は、親族内承継、従業員・役員承継、第三者承継(M&A)の3つです。後継者がいるか、株式をどう移すか、資金と税金をだれが負担するかで選びます。どの方法でも準備には年単位の時間がかかるため、経営者が元気なうちに方針を決めることが大切です。

事業承継の3つの方法と違い

中小企業庁の事業承継ガイドラインは、承継を「親族内承継」「役員・従業員承継」「社外への引継ぎ(M&A等)」の3つに分けています。主な違いは次のとおりです。

項目 親族内承継 従業員・役員承継 第三者承継(M&A)
後継者 子や親族 役員・従業員 社外の会社や個人
株式の移し方 相続・贈与・売買 売買(MBOなど)または相続・贈与 株式譲渡、事業譲渡など
資金の負担 主に相続税・贈与税 後継者の買取資金 買い手が対価を支払う
主な利点 関係者の理解を得やすく、準備期間を取りやすい 事業をよく知る人に任せられる 後継者がいなくても事業を残せる。売却対価を得られる
主な課題 後継者の意思と能力、他の相続人との公平 買取資金の調達、経営者保証の引継ぎ 相手探しと条件交渉、従業員や取引先への説明

親族内承継の割合は減り、親族以外への承継が増える傾向にあると、中小企業庁は指摘しています。最初から1つに絞らず、複数の方法を並べて比べることをおすすめします。

承継するもの:経営・資産・知的資産

事業承継は、株式を渡すだけでは終わりません。ガイドラインでは、承継するものを次の3つに整理しています。

  • 人(経営):経営者の地位と、経営を担う力
  • 資産:自社株式、事業用の不動産・設備、資金
  • 知的資産:技術やノウハウ、顧客との関係、ブランド、許認可

知的資産は目に見えにくく、引継ぎに最も時間がかかります。許認可は、会社が持つものか個人が持つものかによって、承継の手続きが変わります。

親族内承継の進め方と税金

親族内承継では、自社株式を相続や贈与で後継者に移すのが一般的です。業績のよい会社ほど株式の評価額が高くなり、相続税・贈与税の負担が大きくなります。まず、株式の評価額と税額の見込みを把握します。

法人版事業承継税制の特例措置

法人版事業承継税制は、一定の要件を満たす非上場株式について、相続税・贈与税の納税を猶予・免除する制度です。一般措置と特例措置があり、特例措置は対象の株式数や猶予割合の面で手厚い内容です。

項目 期限
特例承継計画の提出(都道府県) 2027年9月30日まで(令和8年度税制改正で2026年3月31日から延長)
特例措置による贈与・相続 2027年12月31日まで(延長なし)

計画の提出期限は延びましたが、承継の実行期限は変わっていません。特例措置を使う可能性があれば、早めに税理士と検討を始めます。認定を受けた後も、雇用や事業の継続などの要件と、毎年の報告が求められます。

遺留分に関する民法の特例

後継者に株式を集中させると、他の相続人の遺留分との調整が問題になります。経営承継円滑化法の民法特例では、後継者と遺留分権利者全員が合意し、経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可を受けると、次の合意ができます。

  • 除外合意:生前に贈与した自社株式などを、遺留分の算定の基礎から外す
  • 固定合意:自社株式の価額を、合意の時点の評価額で固定する

相続人が海外に住んでいる場合、日本の相続税の納税義務の範囲が問題になります。詳しくは外国人の相続税・贈与税をご覧ください。

従業員・役員への承継(MBO・EBO)

役員や従業員に引き継ぐ場合、株式を有償で買い取ってもらう方法(MBO・EBO)と、相続や贈与で無償で譲る方法があります。有償の場合、後継者個人に十分な資金がないことが多く、次の方法で資金を用意します。

  • 後継者が設立した会社が金融機関から借り入れて株式を買い取る
  • ファンドの出資を受ける
  • 経営承継円滑化法に基づく金融支援を利用する

もう1つの課題が経営者保証です。会社の借入れに現経営者の個人保証が付いていると、後継者がその引継ぎをためらうことがあります。「経営者保証に関するガイドライン」に沿って、金融機関と保証の扱いを早めに話し合います。

第三者承継(M&A)の流れ

後継者がいない場合は、社外の会社や個人に事業を引き継ぐ方法があります。一般的な流れは次のとおりです。

  1. 相談先の選定(仲介会社、フィナンシャルアドバイザー、公的機関)
  2. 企業価値の評価と、売却条件の整理
  3. 買い手候補の探索と、秘密保持契約の締結
  4. トップ面談と、基本合意書の締結
  5. 買い手によるデューデリジェンス(財務・税務・法務・労務の調査)
  6. 最終契約の締結と、決済(クロージング)
  7. 統合後の経営体制づくり(PMI)

株式譲渡と事業譲渡では、引き継ぐ範囲が異なります。株式譲渡は株主が替わるだけで、会社そのものは残ります。取引先との契約や許認可も、原則として会社に残ります。事業譲渡は、資産や契約を個別に移す方法です。取引先の同意を得たり、許認可を取り直したりする必要が出ることがあります。中小企業庁は、手続きの進め方や仲介会社との契約の注意点をまとめた「中小M&Aガイドライン」も公表しています。

中小企業の場合は、株式譲渡で会社ごと引き継ぐ形が多く見られます。株式譲渡の具体的な手続きは株式譲渡の手続きで解説しています。全国の都道府県には、国が設置する公的な相談窓口として事業承継・引継ぎ支援センターがあります。

外国人経営者・外国資本の会社で注意する点

外国人が経営する会社や、外国資本の会社には、日本人経営の会社にはない論点があります。

  • 後継者が外国籍の場合、経営者として在留するための在留資格(経営・管理など)の要件を満たすか
  • 相続人や後継者が海外に住んでいる場合、相続税・贈与税の納税義務と、国外の税金との関係
  • 外国投資家が株式を取得する場合、外為法の対内直接投資の届出・報告が必要か
  • 株主名簿が整っているか、名義だけの株主(名義株)がないか
  • 海外の親会社や個人が株主の場合、本国の会社法や税法の手続き

海外の会社が日本企業を買う側の注意点は日本企業の買収(M&A)の流れもあわせてご覧ください。

事業承継の準備の進め方

どの方法を選ぶ場合でも、準備の手順は大きく変わりません。中小企業庁のガイドラインも、早めの準備を勧めています。

  1. 現状の把握:株主構成、財務内容、自社株式の評価額、借入れと経営者保証を整理する
  2. 方針の決定:後継者の候補と承継の方法、時期を決める
  3. 関係者への説明:家族、役員、従業員、主要な取引先と金融機関に、段階を踏んで伝える
  4. 承継計画の作成:株式と経営権を移す時期、税金と資金の手当て、後継者の育成を計画に落とし込む
  5. 実行と見直し:株式の移転、役員の交代と登記、計画の定期的な見直し

株主の所在がわからない場合、株式の集約が進まないことがあります。経営承継円滑化法には、所在不明株主の株式の買取りなどの手続きを使いやすくする会社法の特例もあります。株主名簿の整理は、承継の方法を決める前から始められる準備です。

事業承継の方法のまとめ

事業承継の方法は、親族内承継、従業員・役員承継、第三者承継(M&A)の3つです。どの方法でも、株式の評価、税金、資金、後継者の育成を組み合わせて計画します。法人版事業承継税制の特例措置は、計画の提出期限が2027年9月30日、承継の実行期限が2027年12月31日です。外国人経営者の会社では、在留資格や国外の相続人、外為法の手続きも加わります。

TIMOAは、提携する税理士・司法書士・弁護士などの専門家とともに、現状の整理、承継方法の比較、株式の移転や登記、M&Aの相手探しと手続きをサポートします。詳しくはM&A・事業承継・撤退のサービスをご覧ください。

よくある質問

事業承継の準備はいつから始めるべきですか?

後継者の育成や株式の移転には年単位の時間がかかります。経営者が元気なうちに、現状の把握と方針の決定から始めることをおすすめします。

事業承継税制の特例措置はまだ使えますか?

令和8年度税制改正で、特例承継計画の提出期限は2027年9月30日まで延長されました。ただし、贈与・相続による承継は2027年12月31日までに行う必要があります。

後継者がいない場合はどうすればよいですか?

第三者への承継(M&A)が選択肢になります。全国の都道府県に設置された事業承継・引継ぎ支援センターなど、公的な相談窓口も利用できます。

従業員に会社を引き継ぐとき、株式の買取資金はどう用意しますか?

金融機関からの借入れや、ファンドの活用などの方法があります。相続や贈与で無償で譲る方法もあり、税金の負担とあわせて検討します。

参考・出典

  1. 中小企業庁 事業承継を実施する www.chusho.meti.go.jp
  2. 中小企業庁 事業承継の支援策 www.chusho.meti.go.jp
  3. 中小企業庁 経営承継円滑化法による支援 www.chusho.meti.go.jp
  4. 中小企業庁 事業承継と民法<遺留分>(パンフレット) www.chusho.meti.go.jp
  5. 大阪府 特例承継計画の提出期限の延長 www.pref.osaka.lg.jp

執筆

TIMOA編集部

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法律・税務上の助言ではありません。制度は改正されることがあるため、具体的なお手続きの前にご相談ください。

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