M&A・事業承継・撤退

日本企業の買収(M&A)の流れとデューデリジェンス|外為法・許認可の注意点

外国企業が日本企業を買う方法は、主に株式譲渡と事業譲渡です。どちらを選ぶかで、引き継ぐ債務や許認可、必要な手続きが変わります。M&Aの流れ、デューデリジェンスで確認する項目、外為法の事前届出と許認可の注意点を解説します。

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執筆
TIMOA編集部
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2026年10月1日時点の制度に基づいています。

外国企業が日本企業を買収する方法は、主に株式譲渡と事業譲渡です。流れは、候補の選定、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、クロージングの順に進みます。外国投資家の場合は、外為法の事前届出の要否と、許認可を引き継げるかを早い段階で確認することが重要です。

株式譲渡と事業譲渡の違い

株式譲渡は、売主から対象会社の株式を買い、会社ごと引き継ぐ方法です。事業譲渡は、対象会社から特定の事業の資産・契約・従業員などを選んで買う方法です。

項目 株式譲渡 事業譲渡
契約の相手 株主 対象会社
引き継ぐもの 会社そのもの(資産・負債・契約をすべて) 契約で選んだ資産・負債・契約
簿外債務のリスク 引き継ぐおそれがある 切り離しやすい
許認可 会社に残るため、原則そのまま 原則として買主が取り直す
従業員・取引契約 雇用・契約はそのまま続く 従業員や取引先の個別の同意が必要
会社法の手続き 譲渡制限株式なら会社の承認が必要 全部または重要な一部の譲渡は、売主側で株主総会の特別決議が必要

株式譲渡の特徴

手続きが比較的簡単で、事業を止めずに引き継げます。一方、過去の税務や労務の問題、簿外債務も会社に残ります。そのため、より詳しいデューデリジェンスが行われる傾向があります。日本の非上場会社の多くは、株式の譲渡に会社の承認が必要と定款で定めています。

事業譲渡の特徴

引き継ぐ範囲を選べるため、不要な資産や債務を切り離しやすい方法です。ただし、資産ごとの移転手続き、契約の巻き直し、従業員の同意が必要です。売主側では、事業の全部または重要な一部を譲渡する場合、株主総会の特別決議が求められます。譲渡する資産の帳簿価額が総資産額の5分の1(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)を超えない場合は、この株主総会の決議は不要です。

M&Aの流れ

  1. 買収の目的と条件を整理し、候補企業を探す
  2. 秘密保持契約(NDA)を結び、概要資料を受け取る
  3. 初期の評価を行い、基本合意書(LOI・MOU)を結ぶ
  4. デューデリジェンスを行う
  5. 価格と条件を交渉し、最終契約(株式譲渡契約・事業譲渡契約)を結ぶ
  6. 外為法・独占禁止法などの届出と待機期間を経る
  7. クロージング(代金の支払と株式・資産の移転)
  8. 統合作業(PMI)と各種の登記・届出

基本合意書には、想定する価格の目安、スケジュール、独占交渉の期間などを記載します。価格などの条項には法的な拘束力を持たせず、秘密保持や独占交渉の条項にだけ拘束力を持たせるのが一般的です。最終的な価格は、DDの結果を踏まえて決めます。

外為法や独占禁止法の届出が必要な場合は、待機期間が終わるまで取引を実行できません。最終契約では、届出の完了をクロージングの前提条件とするのが一般的です。

デューデリジェンスの種類と確認事項

デューデリジェンス(DD)は、買主が専門家に依頼して対象会社を調べる手続きです。結果は、価格の調整や、表明保証・補償などの契約条件に反映します。

種類 主な確認事項 主な担当
財務 決算書の正確さ、収益力、運転資本、簿外債務 公認会計士
税務 過去の申告内容、未納税金、税務調査の履歴 税理士
法務 定款・株主構成、重要な契約、支配権変更の条項、訴訟、許認可 弁護士
労務 未払残業代、就業規則、社会保険の加入状況 社会保険労務士、弁護士
事業 市場、顧客の集中、取引先との関係、計画の実現性 コンサルタント
知財・IT 商標・特許の権利者、システムやデータの管理 弁理士、IT専門家

中小企業庁の中小M&Aガイドラインでも、DDは譲り受け側が判断の根拠を得るための重要な手続きとされています。小規模な案件では、税務申告書の確認と経営者へのヒアリングに絞ることもあります。範囲は、案件の規模とリスクに合わせて決めます。

外為法の事前届出と事後報告

外国投資家が日本企業の株式を取得することは、外為法上の対内直接投資にあたります。対象会社の業種と取得の割合によって、事前届出か事後報告が必要です。

区分 対象 手続き
指定業種 非上場会社は1株から、上場会社は1%以上の取得など 取得前6か月以内に日本銀行経由で事前届出。受理から30日は取得できない
指定業種以外 非上場会社の株式取得など 取得後45日以内に事後報告が必要な場合がある

指定業種には、武器、航空機、原子力、宇宙、電力、通信、半導体などが含まれます。30日の待機期間は、問題がないと判断されれば短縮されることがあります。審査に時間がかかる場合は延長されることもあります。

2026年の外為法改正

対内直接投資審査制度を見直す外為法の改正法が、2026年5月29日に成立し、6月5日に公布されました。財務省の説明では、日本企業の株式を持つ外国法人を別の外国投資家が買収するなどして支配する「間接取得」を規制の対象に加えることや、リスクを軽減するための措置を事前届出の事項として明確にすることなどが柱です。施行日は、一部を除き、公布から1年を超えない範囲で政令で定めるとされています。具体的な基準は政省令で定まるため、案件ごとに最新の運用を確認します。制度の全体像は外為法の対内直接投資:事前届出と事後報告で解説しています。

独占禁止法の届出

規模の大きい買収では、公正取引委員会への届出も必要です。株式取得の場合、買主の企業グループの国内売上高合計が200億円を超え、対象会社と子会社の国内売上高合計が50億円を超えるときなどが対象です。議決権の保有割合が20%または50%を超える場合に届け出ます。受理から30日間は、原則として株式を取得できません。

許認可の承継と日本特有の確認点

許認可は、買収の方法によって扱いが大きく変わります。

  • 株式譲渡:許認可を持つ会社が変わらないため、原則としてそのまま使えます。ただし、役員や株主の変更について届出が必要な許認可があります。
  • 事業譲渡:許認可は事業ではなく会社に与えられているため、原則として買主が新たに取得します。取得までの間、事業を行えない期間が生じるおそれがあります。
  • 法令で承継の仕組みがある場合:たとえば建設業は、2020年10月1日から、事業譲渡などの前に認可を受ければ許可を引き継げるようになりました。

許認可が事業の中心である会社を買う場合は、DDの段階で、許認可の一覧、要件、承継の可否を確認します。取引先との契約に、株主が変わると解除できる条項がないかも確認します。

日本の中小企業で確認したいこと

  • 株主名簿と実際の株主が一致しているか。過去の株式の移動に、会社の承認などの手続きが欠けていないか。
  • 金融機関からの借入れに、経営者個人の保証が付いていないか。付いている場合は、買収後の扱いを金融機関と協議します。
  • 役員の退職金や、従業員の退職金の支払見込みがどの程度あるか。
  • 不動産や設備が、会社ではなく経営者個人の名義になっていないか。
  • 重要な取引が、経営者個人の人脈に依存していないか。引継ぎの期間をどう設けるか。

これらは決算書だけでは見えにくい点です。経営者へのヒアリングと、契約書や登記の確認を組み合わせて調べます。

クロージング後に必要な手続き

  • 役員を変更した場合は、変更から2週間以内に登記を申請します。
  • 外国から役員を派遣する場合は、在留資格の手続きが必要です。詳しくは経営・管理ビザの申請書類・審査期間・更新をご覧ください。
  • 税務署などへの異動の届出、金融機関への届出、許認可の変更届を行います。
  • 親会社との取引が始まる場合は、価格設定のルールを整えます。移転価格税制の基本もあわせてご確認ください。

TIMOAにできること

日本企業の買収では、手法の選択、DD、外為法などの届出、許認可の承継、買収後の統合を一続きで設計する必要があります。2026年の外為法改正により、今後は間接取得も規制の対象に加わる予定です。

TIMOAは、提携する弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、行政書士と連携し、候補の検討からDD、届出、クロージング後の手続きまでを日本語・中国語・英語で調整します。詳しくはM&A・事業承継・撤退サービスをご覧ください。

よくある質問

外国企業が日本企業を買収するのに、許可は必要ですか?

業種によります。対象会社が外為法の指定業種を営む場合は、取得前に日本銀行経由で事前届出をし、原則30日の待機期間を経る必要があります。

株式譲渡と事業譲渡は、どちらが一般的ですか?

中小企業のM&Aでは、どちらもよく使われます。手続きが簡単な株式譲渡が選ばれやすい一方、簿外債務を避けたい場合や一部の事業だけを買う場合は事業譲渡が検討されます。

デューデリジェンスは必ず必要ですか?

法律上の義務ではありません。ただし、簿外債務や許認可の問題を見落とすと、買収後に損失となります。規模に応じて範囲を決めて行うことが勧められます。

買収後、対象会社の許認可はそのまま使えますか?

株式譲渡なら会社は変わらないため、原則として使い続けられます。ただし、役員や株主の変更の届出が必要な許認可や、取引先との契約に支配権変更の条項がある場合があるため、事前に確認します。

参考・出典

  1. 中小企業庁 中小M&Aガイドライン www.chusho.meti.go.jp
  2. 財務省 対内直接投資審査制度について www.mof.go.jp
  3. 財務省「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律」について www.mof.go.jp
  4. 財務省 ファイナンス 対内直接投資審査制度の高度化について www.mof.go.jp
  5. 公正取引委員会 株式取得の届出制度 www.jftc.go.jp

執筆

TIMOA編集部

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法律・税務上の助言ではありません。制度は改正されることがあるため、具体的なお手続きの前にご相談ください。

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