M&A・事業承継・撤退

デューデリジェンスのチェックリスト|財務・税務・法務・労務の確認項目

デューデリジェンス(DD)は、M&Aの買手が対象会社のリスクと価値を調べる手続きです。財務・税務・法務・労務の分野別に、確認すべき項目をチェックリストで整理しました。見落としやすい論点と、結果を価格や契約に反映する方法も解説します。

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執筆
TIMOA編集部
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2026年10月1日時点の制度に基づいています。

デューデリジェンス(DD)は、M&Aの買手が対象会社の実態とリスクを調べる手続きです。日本企業の買収では、財務・税務・法務・労務の4分野を中心に確認し、見つかった問題を価格や契約条件に反映します。この記事では、分野ごとの確認項目をチェックリストの形で整理します。

デューデリジェンスとは:目的と実施のタイミング

DDの目的は三つです。対象会社の実態を把握すること、買収価格の根拠を確かめること、契約で手当てすべきリスクを洗い出すことです。

一般的には、基本合意書を結んだ後、最終契約の前に行います。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」も、基本合意の後に買手が財務・税務・法務などのDDを行う流れを示しています。買収全体の流れは日本企業の買収(M&A)の流れとデューデリジェンスで解説しています。

  1. 資料依頼リストを売主に渡し、データルームなどで資料を受け取る
  2. 資料を読み、質問と回答(Q&A)を重ねる
  3. 経営者へのインタビューや、事業所の現地確認を行う
  4. 専門家が報告書をまとめ、買手が判断する

調査の範囲は、案件の規模、業種、予算、スケジュールに合わせて決めます。すべてを同じ深さで調べる必要はありません。業種ごとのリスクが高い分野に重点を置きます。

外国企業が買手のときの注意点

資料の多くは日本語で、勘定科目や契約の書き方も日本の慣行に沿っています。翻訳の範囲と時間を、スケジュールに組み込んでおきます。売主の社員に案件が知られないよう、質問の窓口と資料の受け渡し方法を限定するのが一般的です。本国の会計基準との違い(収益の認識、引当金など)も、早い段階で整理します。

分野ごとの担当と主な確認内容

分野 主な担当 主な確認内容
財務 公認会計士など 資産・負債の実在性、正常な収益力、簿外債務、運転資本
税務 税理士 過去の申告の適否、税務調査の履歴、繰越欠損金、グループ内取引
法務 弁護士 会社の組織と株式、重要な契約、許認可、紛争、知的財産
労務 社会保険労務士・弁護士 労働時間と未払賃金、社会保険、就業規則、外国人雇用
ビジネス 買手の事業部門など 市場、顧客、競合、事業計画の実現性

案件によっては、ITシステム、環境、不動産のDDも行います。

財務デューデリジェンスのチェックリスト

財務DDでは、決算書の数字が実態を表しているかを確認します。中小企業の決算書は、税務申告を主な目的に作られていることが多く、調整が必要になることがあります。

  • 直近数期分の決算書、試算表、勘定科目内訳書がそろっているか
  • 売掛金や在庫は実在し、回収・販売できるか
  • オーナー関連の経費や一時的な損益を除いた「正常な収益力」はいくらか
  • 借入金、リース、保証債務、退職金などの負債が漏れなく把握されているか
  • 運転資本の季節変動と、クロージング時点の水準
  • 主要な顧客・仕入先への依存度
  • オーナーや関係会社との取引、貸付金・借入金

簿外債務の典型例

  • 未払残業代や、加入漏れによる社会保険料
  • 退職金規程に基づく退職金の支払義務
  • 第三者の借入れに対する保証
  • 係争中の損害賠償
  • オフィスや店舗の原状回復義務

正常な収益力と純資産の調整結果は、企業価値の算定に直結します。評価の考え方は企業価値評価の方法で解説しています。

税務デューデリジェンスのチェックリスト

株式譲渡では、対象会社の過去の税務リスクも、会社と一緒に買手側に移ります。法人税の更正は、原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年までさかのぼって行われることがあります。

  • 法人税・消費税・源泉所得税・地方税の申告書と納付の記録
  • 過去の税務調査の指摘事項と、その後の対応
  • 役員報酬、交際費、寄附金など、否認されやすい項目の処理
  • 繰越欠損金の金額と、使える期限
  • 海外の関連会社との取引価格(移転価格)
  • 青色申告の承認や、消費税の各種届出の状況

繰越欠損金は買収後に使えるとは限らない

青色申告をしている法人の欠損金は、平成30年4月1日以後に開始した事業年度に生じたものであれば、10年間繰り越せます。ただし、欠損金が生じた年度から、連続して確定申告書を提出していることが条件です。

また、買収で支配関係が生じた後に、旧事業の廃止と新事業の開始など一定の事由に当たると、欠損金が使えなくなる規定があります。欠損金の節税効果を価格に織り込む場合は、税理士と事前に確認します。

法務デューデリジェンスのチェックリスト

  • 定款、登記事項証明書、株主名簿、株主総会・取締役会の議事録
  • 株式の発行や譲渡が適法に行われてきたか(名義株の有無を含む)
  • 重要な契約のチェンジ・オブ・コントロール条項(株主が変わると相手方が解除できる条項など)
  • 事業に必要な許認可と、株主・役員が変わるときの届出の要否
  • 係争中の訴訟、クレーム、行政指導の有無
  • 商標・ソフトウェアなど知的財産の帰属
  • 個人データの取扱いと、海外への移転の状況

非上場会社の株式は、多くの場合、譲渡に会社の承認が必要です。承認や名義書換の手続は株式譲渡の手続きで確認できます。外国投資家が買手の場合は、外為法の事前届出が必要かどうかも、法務DDとあわせて確認します。

許認可を引き継げるかを確認する

株式譲渡では、許認可は原則として会社に残ります。ただし、株主や役員の変更で届出が必要な許認可や、役員の欠格事由が審査される許認可があります。買収後に役員を入れ替える予定なら、新しい役員が要件を満たすかも確認します。

労務デューデリジェンスのチェックリスト

労務は、中小企業のM&Aで問題が見つかりやすい分野です。特に未払残業代は、金額が大きくなることがあります。

  • 労働時間の記録と、残業代の計算方法(固定残業代の設計を含む)
  • 36協定の締結と届出
  • 就業規則、賃金規程、退職金規程
  • 社会保険・労働保険の加入漏れ
  • 管理監督者として扱っている社員の実態
  • 外国人社員の在留資格と、実際の仕事内容が合っているか
  • 労働組合、労使紛争、ハラスメントの申告

賃金請求権の消滅時効は、2020年4月1日以降に支払期日が来る賃金について5年とされ、当分の間は3年です。未払賃金があれば、過去3年分の請求を受けるおそれがあります。

社会保険の加入漏れが見つかった場合も、さかのぼって保険料の納付を求められることがあります。対象者と期間を特定し、負担額を見積もります。

在留資格で認められていない仕事をさせていると、会社が不法就労助長罪に問われるおそれがあります。在留カード、雇用契約、実際の業務を照合します。

DDの結果を価格と契約に反映する方法

発見事項の種類 主な対応
金額を見積もれるリスク(未払残業代など) 買収価格から差し引く
発生するか不確かなリスク(係争など) 表明保証と補償条項で手当てする
特定の既知のリスク 特別補償の条項を設ける
クロージング前に直せる問題 是正をクロージングの前提条件にする
取引の前提を崩す重大な問題 取引の中止やスキームの変更を検討する

株式譲渡ではリスクが会社に残るため、リスクが大きい場合は事業譲渡への切り替えを検討することもあります。DDで分かったことは、買収後の統合(PMI)の計画にも使います。

TIMOAにできること

DDは、財務・税務・法務・労務の専門家が分担して調べ、その結果を価格と契約に反映するまでが一つの流れです。調査の範囲は、案件の規模とリスクに合わせて決めます。

TIMOAは、提携する税理士、弁護士、社会保険労務士とともに、資料依頼リストの準備、日本語資料の読み解き、DD結果の整理と契約への反映を、中国語と日本語で支援します。詳しくはM&A・事業承継・撤退のページをご覧ください。

よくある質問

デューデリジェンスはいつ行いますか?

一般的には、基本合意書を結んだ後、最終契約を結ぶ前に行います。調査の範囲と期間は、案件の規模やスケジュールに合わせて決めます。

小さな会社の買収でもデューデリジェンスは必要ですか?

規模が小さくても、株式譲渡では過去の税務や労務の問題が会社に残ります。範囲を絞ってでも、少なくとも財務・税務・労務の基本的な確認を行うことをおすすめします。

対象会社の繰越欠損金は買収後も使えますか?

使える場合もありますが、支配関係が生じた後に旧事業の廃止など一定の事由に当たると、使えなくなる規定があります。価格に織り込む前に税理士と確認します。

デューデリジェンスで問題が見つかったらどうなりますか?

金額を見積もれる問題は価格から差し引き、不確かなリスクは表明保証や補償条項で手当てするのが一般的です。重大な問題があれば、取引の中止やスキームの変更も検討します。

参考・出典

  1. 経済産業省・中小企業庁 中小M&Aガイドライン(第3版) www.meti.go.jp
  2. 厚生労働省 確かめよう労働条件 賃金請求権の消滅時効に関するQ&A www.check-roudou.mhlw.go.jp
  3. 国税庁 No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除 www.nta.go.jp

執筆

TIMOA編集部

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法律・税務上の助言ではありません。制度は改正されることがあるため、具体的なお手続きの前にご相談ください。

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