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移転価格税制の基本|親会社との取引で注意すべき独立企業間価格と文書化

海外の親会社と日本子会社の取引価格は、移転価格税制の対象です。独立企業間価格の考え方、主な算定方法、ローカルファイルの作成義務の基準、文書がない場合のリスクを、外国企業の日本法人向けにわかりやすく解説します。

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執筆
TIMOA編集部
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2026年10月1日時点の制度に基づいています。

移転価格税制は、日本法人と海外の関連会社(国外関連者)との取引価格が、第三者間の価格(独立企業間価格)と異なり、日本の所得が減っている場合に、独立企業間価格で取引したものとみなして法人税を課す制度です。海外親会社への商品代金、ロイヤルティ、業務委託料などが主な対象です。取引規模が一定以上なら、価格の根拠を示す文書(ローカルファイル)を申告期限までに作成する義務があります。

移転価格税制とは:対象となる相手と取引

国外関連者とは、日本法人と一定の資本関係や実質的な支配関係にある外国法人です。海外の親会社、兄弟会社、海外子会社が典型例です。

国外関連者との取引であれば、種類を問わず対象になります。日本子会社でよく見られるのは、次のような取引です。

  • 商品や原材料の売買
  • 商標や技術などの無形資産の使用料(ロイヤルティ)
  • 経営指導料、システム利用料、業務委託料などの役務提供の対価
  • グループ内の貸付金・借入金の利息
  • 出向者の人件費の負担

日本法人が国外関連者に高く払いすぎたり、安く売りすぎたりすると、日本で申告する所得が減ります。この部分を独立企業間価格で計算し直して課税するのが、移転価格税制です。逆に、日本の所得が増える方向の価格であれば、この制度による課税は行われません。

日本子会社で問題になりやすい場面

  • 設立から年数がたっても、赤字や低い利益率が続いている
  • 親会社への支払(ロイヤルティや管理費)が大きく、利益を圧迫している
  • 親会社から仕入れた商品の利益率が、同じような機能を持つ企業より低い
  • 契約書がなく、料金の計算根拠を説明できない

どれか一つに当てはまるだけで課税されるわけではありません。ただし、税務調査で説明を求められやすい場面です。

独立企業間価格の考え方と算定方法

独立企業間価格とは、国外関連者との取引が、資本関係のない第三者どうしで行われたとしたら成立すると認められる価格です。同じような状況で非関連者間で行われた、同種または類似の取引(比較対象取引)と比べて判断します。

平成23年(2011年)の税制改正で、算定方法の優先順位は廃止されました。現在は、取引の内容や当事者が果たす機能などを考慮して、最も適切な方法を選ぶ仕組みです。OECD移転価格ガイドラインとの整合性を図るための改正です。

主な算定方法 考え方 検討されやすい場面
独立価格比準法 第三者間の同種取引の価格と比べる 市場価格がある商品の売買
再販売価格基準法 再販売価格から通常の利益を差し引く 親会社から仕入れて販売する販売子会社
原価基準法 原価に通常の利益を加える 製造の受託や役務の提供
取引単位営業利益法 営業利益率などを比較対象企業と比べる 比較できる取引価格が見つからない場合
利益分割法 取引から生じた利益を、貢献度に応じて分ける 双方が重要な無形資産を持つ場合

たとえば、親会社から仕入れた商品を日本で販売する子会社なら、同じような販売機能を持つ独立した企業の利益率と比べて、日本子会社の利益率が低すぎないかを確認します。

どの方法が適切かは、日本子会社が担う機能(販売、製造、研究開発など)、負うリスク、使う無形資産によって変わります。親会社グループの方針をそのまま当てはめず、日本法人の実態に合うかを確認します。

ローカルファイルの作成義務(同時文書化)

平成28年度の税制改正で、BEPSプロジェクトの勧告を踏まえ、移転価格の文書化制度が整備されました。現在は、一定規模以上の国外関連取引について、ローカルファイルを確定申告書の提出期限までに作成・保存する義務(同時文書化義務)があります。適用の開始時期や細かな要件は、国税庁の文書化制度のFAQで確認できます。

項目 内容
対象 一の国外関連者との前事業年度の取引合計額が50億円以上、または無形資産取引の合計額が3億円以上
作成期限 確定申告書の提出期限まで(作成または取得し、保存する)
保存期間 国内の事務所で、法令で定める期間保存する(期間は国税庁の案内で確認)
提示 調査で求められた場合、税務署が指定する日(求めから45日を超えない範囲)まで

両方の基準を下回る取引は、同時文書化の義務が免除されます。ただし、独立企業間価格の算定に重要な書類は、調査で求められれば提示する必要があります。免除されるのは作成の期限であり、説明の責任がなくなるわけではありません。

ローカルファイルに記載する主な内容

  • 国外関連者との資本関係と、双方の事業の内容
  • 取引の内容(契約、価格の設定方法、取引条件)
  • それぞれが果たす機能、負うリスク、使用する無形資産
  • 選んだ算定方法と、その方法を選んだ理由
  • 比較対象取引の選定と、差異の調整の内容

国税庁は、記載例を示した「同時文書化対応ガイド」を公表しています。初めて作成する場合は、構成の参考になります。

大規模グループに求められる文書

連結総収入金額が一定規模以上の大規模な多国籍企業グループには、ローカルファイルとは別に、グループ全体の事業概況を示すマスターファイル(事業概況報告事項)と、国ごとの収入や納税額などを示す国別報告事項の提供義務があります。日本子会社に提出義務が生じる場合もあるため、親会社の担当部署と分担を確認します。

経営指導料などグループ内役務の注意点

親会社が提供する管理サービスやシステムの対価を支払う場合は、日本法人が実際に便益を受けているかを説明できるようにします。日本法人が自ら行っている業務と重複していないか、料金の配分基準が合理的かも確認のポイントです。契約書と請求書に加え、提供されたサービスの記録(報告書や会議資料など)を保存しておくと、調査の際に説明しやすくなります。

文書を準備しないとどうなるか

ローカルファイルなどを指定の日までに提示しないと、税務署は、同業者の利益率などを使って独立企業間価格を推定し、課税できます(推定課税)。会社にとって不利な前提で計算されるおそれがあります。

移転価格課税を受けると、日本で追加の法人税などを納めます。親会社の国でも同じ所得に課税されていれば、二重課税の状態になります。租税条約を結んでいる国との間では、相互協議を申し立てて、二重課税の解消を求める方法があります。

日本子会社がとるべき実務対応

  1. 国外関連者との取引を一覧にし、金額と契約書の有無を確認する
  2. 取引ごとに価格の決め方を文書にし、契約書を整える
  3. 前事業年度の取引額が、50億円・3億円の基準を超えるかを毎期確認する
  4. 親会社グループの移転価格ポリシーと、日本法人の実態との整合性を確認する
  5. 重要な取引は、事前確認の利用も検討する

よくある見落とし

  • 親会社が作成したグループの文書をそのまま使い、日本法人が担う機能やリスクの説明が不足している
  • 契約書に書かれた料金の計算方法と、実際の請求の方法が一致していない
  • 取引額が基準を下回った年に、価格の根拠となる資料を残していない
  • 出向者の給与の負担や立替金の精算を、国外関連取引として管理していない

いずれも、税務調査で説明を求められたときに不利になりやすい点です。毎期の決算の前に、取引の一覧と契約書、請求書を突き合わせて確認しておくと安心です。

事前確認(APA)とは

事前確認は、独立企業間価格の算定方法などについて、あらかじめ税務当局の確認を受ける手続です。法人の予測可能性を確保し、移転価格税制の適正で円滑な執行を図ることが目的とされています。相手国の当局も含めて確認を受ける場合は、相互協議を伴います。時間と費用がかかるため、取引の規模と課税リスクを踏まえて判断します。

法人税や消費税を含む税金の全体像は日本法人にかかる税金の全体像、進出形態による違いは日本支店と日本法人(子会社)の違いで解説しています。海外から受けるサービスの消費税の扱いは、インボイス制度と外国企業も参考になります。

TIMOAにできること

移転価格の対応は、取引を整理し、価格の決め方を説明できる状態にすることから始まります。設立の段階で、親会社との契約や料金の計算方法を決めておくと、後の調査対応の負担を減らせます。

TIMOAは、提携する税理士と連携し、グループ内取引の整理、契約書の整備、ローカルファイル作成の要否の確認を支援します。詳しくは会計・税務・労務のサポートをご覧ください。

よくある質問

赤字の日本子会社でも移転価格税制の対象になりますか?

対象になります。親会社との取引価格が原因で所得が少なくなっていると判断されれば、独立企業間価格で計算し直して課税されることがあります。

取引額が50億円未満なら文書は不要ですか?

同時文書化の義務はありませんが、調査で独立企業間価格の算定に重要な書類の提示を求められることがあります。価格の決め方と契約書は日頃から整えておきます。

ローカルファイルはいつまでに作成しますか?

確定申告書の提出期限までに作成または取得し、保存します。調査で求められた場合は、税務署が指定する日(求めから45日を超えない範囲)までに提示します。

事前確認を受けるメリットは何ですか?

算定方法などについて、あらかじめ税務当局の確認を受けられます。将来の課税リスクを抑え、予測可能性を高めることができます。

参考・出典

  1. 国税庁 移転価格事務運営要領 第1章 定義及び基本方針 www.nta.go.jp
  2. 国税庁 移転価格税制に係る文書化制度(FAQ) www.nta.go.jp
  3. 国税庁 移転価格税制の適用におけるポイント www.nta.go.jp
  4. 国税庁 同時文書化対応ガイド(ローカルファイルの作成サンプル) www.nta.go.jp
  5. 国税庁 移転価格事務運営要領 第6章 事前確認 www.nta.go.jp

執筆

TIMOA編集部

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法律・税務上の助言ではありません。制度は改正されることがあるため、具体的なお手続きの前にご相談ください。

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