知財・リスク・コンプライアンス

安全保障貿易管理(輸出管理)の基本|該非判定と輸出許可の流れ

日本から貨物を輸出したり、技術を海外や外国の関係者に提供したりする場合、外為法の安全保障貿易管理に従います。規制品に当たるかを自ら判定し(該非判定)、必要なら経済産業大臣の許可を受けます。2025年10月のキャッチオール規制見直しも含め、基本を整理しました。

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TIMOA編集部
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2026年10月1日時点の制度に基づいています。

安全保障貿易管理(輸出管理)とは、武器や大量破壊兵器の開発に使われるおそれのある貨物や技術が、懸念のある国や組織に渡らないよう管理する仕組みです。日本では外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、規制品に当たるかを輸出者が判定し(該非判定)、必要な場合は経済産業大臣の許可を受けてから輸出・提供します。大企業だけでなく、部品、素材、ソフトウェアを扱う中小企業や外資系企業も対象です。

安全保障貿易管理の対象:貨物の輸出と技術の提供

外為法は、貨物の輸出(第48条)と技術の提供(第25条)の両方を規制しています。

  • 貨物の輸出:製品、部品、素材、装置などを日本から外国へ送ること。展示会への持出しやサンプル、修理品の返送も含みます。
  • 技術の提供:設計図、仕様書、プログラム、製造ノウハウなどを、外国にいる人や非居住者に提供すること。メール、クラウド、オンライン会議、技術指導による提供も含みます。

中国本土や香港の親会社・グループ会社との取引でも、規制の内容は変わりません。グループ内の図面共有や技術者の派遣も、技術の提供に当たることがあります。

リスト規制とキャッチオール規制の違い

項目 リスト規制 キャッチオール規制(補完的輸出規制)
対象品目 輸出貿易管理令別表第1の1〜15項などに掲げる貨物と、それに対応する技術 リスト規制品以外のほぼすべての貨物・技術(食料品・木材などを除く)
仕向地 全地域 グループA(輸出令別表第3の国)以外が中心
許可が必要になる場合 仕様が規制値に該当すれば、相手先にかかわらず必要 用途・需要者に懸念がある場合(客観要件)、または経済産業大臣から通知を受けた場合(インフォーム要件)

グループAは、輸出管理を厳格に実施している国として輸出令別表第3に掲げられた国です。中国本土と香港は含まれません。

2025年10月9日施行のキャッチオール規制の見直し

経済産業省は、2024年4月の産業構造審議会の中間報告を踏まえて補完的輸出規制を見直し、関係する政令・省令を2025年4月に公布、同年10月9日から施行しました。主な変更点は次のとおりです。

  • 一般国(グループAと国連武器禁輸国以外の国・地域)向けでは、輸出令別表第1の16項が特定品目とそれ以外に分けられ、通常兵器に関する用途要件・需要者要件(客観要件)が設けられました。
  • 国連武器禁輸国向けでは、需要者に着目した要件が加わりました。
  • グループA向けでも、迂回輸出のおそれがある場合には、経済産業大臣の通知により許可申請が必要になる仕組みが設けられました。

需要者の確認には、経済産業省が公表する「外国ユーザーリスト」を使います。リストは随時改正されるため、取引のたびに最新版を確認します。対象となる品目の範囲や要件の細部は、経済産業省の解説資料と政省令の条文で確認します。

該非判定の進め方

該非判定とは、輸出する貨物や提供する技術が、リスト規制の項目に「該当」するか「非該当」かを判定することです。経済産業省は個別の該非判定を行わないため、輸出者が自ら判断します。

  1. 貨物や技術の仕様(性能、材質、機能など)を正確に把握します。
  2. 輸出貿易管理令別表第1、外国為替令別表と、貨物等省令の規定と照合します。
  3. 判定の結果と根拠を、該非判定書として記録・保存します。
  4. 非該当の場合も、キャッチオール規制の要件(用途・需要者)を確認します。

技術やプログラムの判定では、外国為替令別表と、役務取引に関する通達もあわせて確認します。設計、製造、使用のどの段階の技術かによって、規制の対象が変わることがあります。製品が非該当でも、その製造技術が該当する場合もあるため、貨物と技術を分けて判定します。

自社で判定が難しい部品や素材は、メーカーから該非判定書を入手できます。ただし、内容を確認する責任は輸出者にあります。法令は毎年のように改正されるため、判定書の作成日と根拠法令の時点も確認します。

技術提供とみなし輸出の注意点

規制技術を日本国内で非居住者に提供する場合も、許可の対象です。これを「みなし輸出」と呼びます。日本の事業所に勤務する外国人社員は、原則として居住者として扱われます。

ただし、2022年5月1日から運用が明確化され、居住者であっても次のような「特定類型」に当たる人への提供は、非居住者への提供と同様に管理することになりました。

  • 雇用契約などにより、外国政府や外国法人の支配下にある人
  • 外国政府などから多額の経済的利益を受け、その実質的な支配下にある人
  • 外国政府などの指示を受けて日本で行動する人

技術の提供は、国境を越える場面に限りません。日本の工場で海外の技術者に研修を行う、海外出張に規制技術を保存したパソコンを持ち出す、海外のサーバに設計データを置いて共有する、といった場面も確認の対象になり得ます。社内の情報システムの管理と、輸出管理の担当部署が連携しておくことが大切です。

採用時には、誓約書などで特定類型への該当性を自己申告してもらう方法が示されています。外国人社員の採用手続は外国人社員の採用と就労ビザもご覧ください。

輸出許可の申請と社内体制

許可が必要な場合は、輸出や技術提供の前に経済産業大臣の許可を受けます。申請には、取引の内容、需要者、最終用途を示す資料が求められます。審査には時間がかかるため、契約や出荷の日程に余裕を持たせます。

リスト規制品を扱う事業者は、輸出者等遵守基準に沿って、責任者の選任、該非確認の手順、監査、記録の保存などの体制を整えます。継続的な取引には包括許可を利用できる場合があり、その多くは輸出管理内部規程の届出が前提になります。

取引ごとに確認したいこと

  • 最終需要者と最終用途:誰が、何に使うのかを、注文書や需要者の誓約書で確認します。
  • 再輸出の有無:香港などを経由して第三国に送られる取引は、最終仕向地を確認します。
  • 取引の不自然さ:用途に比べて過大な性能や数量、相場と合わない支払条件、使途の説明を拒む場合は、注意が必要です。
  • 記録の保存:該非判定書、需要者の確認資料、許可の写しを、取引ごとに保存します。

疑わしい点が解消できない場合は、取引を止めて経済産業省に相談することが基本です。経済産業省は、キャッチオール規制の手続きフロー図や、客観要件を確認するためのシートを公開しています。初めて輸出する場合は、まずこうした資料で自社の取引に当てはまる手続きを確認します。

違反した場合の罰則と行政制裁

区分 主な内容
大量破壊兵器等関連の刑事罰 10年以下の拘禁刑。罰金は個人3,000万円以下、法人10億円以下(目的物の価格の5倍がこれを超える場合は5倍以下)
通常兵器関連の刑事罰 7年以下の拘禁刑。罰金は個人2,000万円以下、法人7億円以下(同様に価格の5倍以下)
行政制裁 3年以内の輸出・技術提供の禁止、担当役員等の他社での就任禁止など

違反に気付いたときは、経済産業省への自主的な報告が処分の判断で考慮されることがあります。また、2025年6月1日に施行された改正刑法により、刑罰は「懲役」から「拘禁刑」に改められています。違反は、取引先や金融機関からの信用にも大きく影響します。

まとめ

輸出管理は、該非判定、キャッチオール規制の確認、技術提供の管理、社内体制の4点が基本です。日本の拠点と海外の本社の間の取引こそ、確認が漏れやすい分野です。外国からの出資に関する外為法の手続は外為法の対内直接投資で、輸入側の手続は輸入ビジネスの手続きで解説しています。TIMOAは、提携する専門家と連携し、該非判定の進め方や輸出管理の社内規程づくりを支援しています。詳しくは知財・リスク・コンプライアンスのサービスをご覧ください。

よくある質問

中国本土の親会社に図面をメールで送るだけでも許可が必要ですか?

図面がリスト規制の技術に当たる場合は、メールやクラウドでの送付も技術の提供として許可が必要になることがあります。送る前に該非判定を行います。

該非判定書はメーカーからもらえば十分ですか?

メーカーの該非判定書は判断の参考になりますが、内容を確認する責任は輸出者にあります。型番や仕様が一致しているか、最新の法令に基づくものかを確認します。

リスト規制に当たらなければ許可は不要ですか?

リスト規制に当たらなくても、用途や需要者に懸念がある場合などは、キャッチオール規制により許可が必要になることがあります。

違反するとどうなりますか?

刑事罰のほか、最長3年間の輸出・技術提供の禁止などの行政制裁があります。経済産業省が警告を行い、その内容を公表した例もあります。

参考・出典

  1. 経済産業省 安全保障貿易管理 www.meti.go.jp
  2. 経済産業省 補完的輸出規制の見直しについて(2025年10月9日施行) www.meti.go.jp
  3. 経済産業省 みなし輸出管理の運用明確化について www.meti.go.jp
  4. 経済産業省 キャッチオール規制 www.meti.go.jp
  5. 経済産業省 申請の流れ(輸出が初めての方へ) www.meti.go.jp

執筆

TIMOA編集部

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法律・税務上の助言ではありません。制度は改正されることがあるため、具体的なお手続きの前にご相談ください。

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