知財・リスク・コンプライアンス

反社会的勢力のチェック方法|取引前の確認と契約書の暴排条項

日本では、取引相手が暴力団などの反社会的勢力でないかを確認し、契約書に暴力団排除条項を入れることが一般的です。都道府県の暴力団排除条例は、事業者に確認と条項の導入を努力義務として求めています。確認の方法と契約条項の要点を整理しました。

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TIMOA編集部
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2026年10月1日時点の制度に基づいています。

反社会的勢力のチェック(反社チェック)とは、取引相手やその役員が暴力団などの反社会的勢力でないかを、取引の前と取引中に確認することです。日本では政府の指針と都道府県の暴力団排除条例を背景に、確認と契約書への暴力団排除条項(暴排条項)の導入が広く行われています。日本で事業を始める外国企業も、同じ水準の対応を求められます。

反社会的勢力のチェックが求められる理由

2007年6月、政府の犯罪対策閣僚会議の幹事会で「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が申し合わされました。指針は、反社会的勢力を「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と位置付けています。そのうえで、企業に次の対応を求めています。

  • 担当者任せにせず、組織として対応する
  • 警察、暴力追放運動推進センター、弁護士など外部の専門機関と連携する
  • 取引関係を含め、一切の関係を遮断する
  • 不当要求には民事と刑事の両面で法的に対応する
  • 裏取引や資金提供は絶対に行わない

反社会的勢力との関係が明らかになると、金融機関の取引停止、取引先からの契約解除、許認可への影響など、事業の継続に関わる結果を招くことがあります。銀行の口座開設でも、反社会的勢力でないことの表明を求められます(外国人経営者の法人口座開設)。

金融機関、不動産、建設などの業界では、業界団体のひな形や約款に暴力団排除条項が組み込まれています。日本で事務所を借りる、口座を開く、工事を発注するといった場面で、外国企業も同じ確認と表明を求められます。

警察庁などは、企業を対象に関係遮断の取組状況についてのアンケートを行い、結果を公表しています。指針が示されてから年数がたっているため、指針や条例の内容を社内であらためて確認し、現在の取引の実務に合っているかを見直しておくことが大切です。指針自体に法的な拘束力はありませんが、関係遮断の体制が不十分なまま会社に損害が生じると、役員の責任が問われるおそれがあると指摘されています。

暴力団排除条例で事業者に求められること

暴力団排除条例は、すべての都道府県で制定されています。内容は都道府県ごとに異なるため、事業を行う地域の条例を確認します。ここでは東京都の条例を例に挙げます。

規定 内容 性質
契約時の確認(第18条第1項) 契約が暴力団の活動を助長する疑いがあるときは、相手方が暴力団関係者でないことを確認する 努力義務
契約書の特約(第18条第2項) 相手方が暴力団関係者と判明した場合に、催告なしで解除できる旨を定める 努力義務
利益供与の禁止(第24条) 暴力団の威力を利用する対価や、活動を助長する目的での利益供与を禁止する 違反すると勧告・公表などの対象

確認と特約は努力義務ですが、確認を怠ると、相手方の素性に気付かないまま取引を続けるおそれがあります。特約がなければ、判明後の契約解除も難しくなります。確認の手順を社内で決め、実施した記録を残すことが実務上の備えになります。

反社チェックの方法

一つの方法だけで判断せず、リスクに応じて組み合わせます。

  1. 基本情報の確認:登記事項証明書で、商号、本店、役員、設立日を確認します。短期間での商号・本店・役員の頻繁な変更は注意点です。
  2. 公知情報の検索:新聞記事データベースやインターネットで、会社名と代表者・役員名を、不祥事に関する語句と組み合わせて検索します。
  3. 自社や業界の情報:社内に蓄積した情報や、業界団体の情報を照合します。
  4. 専門の調査会社:重要な取引や、検索で懸念が出た場合に依頼します。
  5. 外部機関への相談:疑いが強い場合は、警察や都道府県の暴力追放運動推進センターに相談します。

検索の際は、現在の名称だけでなく、旧商号や役員の旧姓・別名も対象にします。中国語の氏名は、日本語の漢字表記、ピンイン、英語表記で結果が変わるため、複数の表記で確認します。

海外の取引先や外国籍の役員については、日本語の情報だけでは不十分なことがあります。本国での報道、実質的な支配者(株主)の確認、各国の制裁リストの照合も検討します。財務省が公表する外為法に基づく資産凍結等の対象者も、確認先の一つです。

確認のタイミングと対象

タイミング 主な対象
取引開始前 取引先の会社、代表者、役員、主要株主
取引の継続中 既存の取引先(年1回など定期的に)
変化があったとき 商号・役員・株主の変更、不審な報道があった場合
社内 役員・従業員の採用時、出資者の受入れ時
M&A 買収対象の会社、その役員・取引先

すべての取引先に同じ深さの調査をする必要はありません。少額・単発の取引は公知情報の検索にとどめ、継続的な取引、多額の取引、出資や不動産の取引では調査会社の利用も検討する、というようにリスクに応じて段階を分けると、実務の負担を抑えられます。

日本企業の買収では、反社会的勢力との関係もデューデリジェンスの確認項目になります(デューデリジェンスのチェックリスト)。

社内規程と確認記録の残し方

反社チェックは、担当者ごとに方法が違うと、漏れや判断のばらつきが生じます。社内規程で次の点を決めておきます。

  • 確認の対象(取引先の種類、金額の基準、役員・株主の範囲)
  • 確認の方法(使うデータベース、検索語句、調査会社に依頼する基準)
  • 懸念が見つかったときの報告先と、取引の可否を判断する責任者
  • 記録の内容(確認日、確認者、方法、結果、判断)と保存期間

記録は、取引先から問合せを受けたときや、金融機関・監査法人から体制を確認されたときの説明資料にもなります。日本法人と海外の本社で別々の基準を使っている場合は、グループとしての方針をそろえておくと運用しやすくなります。

契約書に入れる暴力団排除条項の内容

暴排条項は、取引基本契約、業務委託契約、賃貸借契約などに広く入れられています。一般的には次の内容を定めます。

  • 表明・確約:自社、役員、実質的に経営を支配する者が反社会的勢力でないことを表明し、将来も該当しないことを確約する
  • 定義:暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団関係企業などを列挙する例が多く見られます
  • 行為の禁止:暴力的な要求、不当な要求、脅迫的な言動、信用の毀損などを行わないことを約束する
  • 無催告解除:違反が判明した場合、催告なしに直ちに契約を解除できる
  • 損害賠償:解除した側は相手方の損害を賠償せず、解除された側は解除により生じた損害を賠償する
  • 再委託先等への適用:下請や再委託先にも同じ条件を求める

外国企業との契約で英文の契約書を使う場合も、同じ内容の条項を入れておくと安心です。契約書全体の注意点は日本の契約書の注意点で解説しています。

該当が疑われたときの対応

  • 担当者が一人で判断・対応せず、責任者に報告して組織として対応します。
  • 相手方に疑いの内容を伝える前に、警察、暴力追放運動推進センター、弁護士に相談します。
  • 解除や取引停止は、契約条項に沿って行い、経緯を記録します。
  • 不当な要求には応じず、やり取りを記録して外部機関と共有します。

検索で同姓同名の人物の記事が見つかっただけで、相手方を反社会的勢力と決めつけるのは避けます。根拠が不十分なまま取引を断ったり、その理由を第三者に伝えたりすると、名誉や信用をめぐる別の紛争になるおそれがあります。判断に迷う段階こそ、外部機関への相談が有効です。

まとめ

反社チェックは、確認の手順、定期的な見直し、契約書の暴排条項、疑わしい場合の対応体制をセットで整えることが大切です。外国企業は、日本の情報と本国の情報の両方を確認する体制が必要になります。TIMOAは、提携する弁護士と連携し、社内の確認手順づくりや契約書への暴排条項の導入を支援しています。詳しくは知財・リスク・コンプライアンスのサービスをご覧ください。

よくある質問

反社チェックは法律上の義務ですか?

すべての取引に一律で義務付ける法律はありません。ただし、暴力団排除条例は確認と契約条項の導入を努力義務として定めており、金融・不動産・建設などでは実務上ほぼ必須です。

海外の取引先も反社チェックの対象になりますか?

対象になります。日本の暴力団と関係がないかに加え、本国での報道や制裁リストなど、海外の情報もあわせて確認するのが一般的です。

取引先が反社会的勢力だと分かった場合はどうすればよいですか?

担当者だけで対応せず、組織として判断します。警察や暴力追放運動推進センター、弁護士に相談したうえで、契約の暴排条項に基づいて関係を解消します。

参考・出典

  1. 警察庁 令和3年版警察白書 暴力団排除活動の推進 www.npa.go.jp
  2. 警視庁 東京都暴力団排除条例Q&A www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp
  3. 東京都 東京都暴力団排除条例(例規集) www.reiki.metro.tokyo.lg.jp
  4. 法務省 企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針 www.moj.go.jp

執筆

TIMOA編集部

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法律・税務上の助言ではありません。制度は改正されることがあるため、具体的なお手続きの前にご相談ください。

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