2026年10月1日時点の制度に基づいています。
役員報酬を法人税の損金に算入するには、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれかに当たる必要があります。中小の日本法人で基本になるのは定期同額給与で、原則として事業年度開始の日から3か月以内に月額を決め、その期は毎月同じ額を支払います。賞与を払う場合は、事前に税務署へ届け出ます。
役員報酬は会社法の手続で決める
株式会社の取締役の報酬は、定款に定めがなければ、株主総会の決議で決めます(会社法第361条)。実務では、株主総会で取締役全員の報酬の上限額を決め、各人への配分を取締役会などで決める方法が一般的です。
- 決議の内容と日付を議事録に残す
- 海外の親会社が株主の場合も、株主としての決議を書面で整える
- 報酬の額を変えるときも、同じ手続を繰り返す
合同会社の場合は、定款の定めや社員間の決定に基づいて業務執行社員の報酬を決めます。会社形態の違いは株式会社と合同会社の違いで解説しています。
損金に算入できる役員給与の3つの種類
| 種類 | 内容 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 定期同額給与 | 1か月以下の一定の期間ごとに、同額を支給する給与 | 改定は原則として期首から3か月以内 |
| 事前確定届出給与 | 所定の時期に、確定した額を支給する給与(役員賞与など) | 期限までに税務署へ届出をし、届出どおりに支給 |
| 業績連動給与 | 利益などの指標に連動して支給する給与 | 算定方法の開示などの要件。同族会社は原則として使えない |
このどれにも当たらない役員給与は、損金になりません。また、どれかに当たっても、職務に比べて不相当に高額な部分や、事実を隠したり仮装したりして支給した給与は損金になりません。
不相当に高額かどうかの判断
不相当に高額かどうかは、主に次の2つの面から判断されます。
- 実質的な基準:役員の職務の内容、会社の収益、使用人に対する給与の支給状況、同種の事業を営む同規模の法人の役員給与の状況などに照らして判断します。
- 形式的な基準:定款や株主総会の決議で定めた支給限度額を超えていないかで判断します。
株主総会で決めた上限額を超えて支払うと、超えた部分は損金になりません。報酬を上げる前に、上限額の範囲内かを確認します。
定期同額給与のルール
改定できる時期
定期同額給与の額を変えられるのは、原則として事業年度開始の日から3か月を経過する日までです。3月決算の会社なら、6月の定時株主総会で改定するのが一般的です。申告期限の延長の特例を受けていて、特別な事情により定時株主総会を3か月以内に開けない場合などは、改定できる期間が延びることがあります。
設立1期目も、期首(設立日)から3か月以内に月額を決めておくことが基本です。決めた月額は、その事業年度の終わりまで変えずに支払います。
期中に改定できる場合
- 臨時改定事由:役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更など、やむを得ない事情による改定
- 業績悪化改定事由:経営状況が著しく悪化したことなどによる減額
これらに当たらない期中の増額は、増額した部分が損金になりません。たとえば月額50万円を期の途中で60万円に上げた場合、増額後の各月の差額10万円が損金不算入になります。
経済的利益も役員給与になる
金銭の報酬だけでなく、会社が役員に与える経済的利益も役員給与に含まれます。たとえば、役員の個人的な費用を会社が負担する場合や、社宅を著しく低い家賃で貸す場合です。毎月おおむね一定の額であれば、定期同額給与として扱われます。会社の経費として処理していても、役員給与と認定されると、源泉徴収が漏れていたことにもなります。
役員報酬の源泉徴収
居住者の役員に支払う報酬は、社員の給与と同じく、源泉徴収税額表で所得税を差し引き、翌月10日までに納付します。年末調整の対象にもなります。役員だけの会社でも、報酬を払うなら給与支払事務所等の開設届出書が必要です。
事前確定届出給与(役員賞与)の届出期限
役員に賞与を払う場合は、支給の時期と金額を事前に決め、「事前確定届出給与に関する届出書」を税務署に提出します。
| 区分 | 届出期限 |
|---|---|
| 原則 | 株主総会等の決議の日から1か月を経過する日と、会計期間開始の日から4か月を経過する日のいずれか早い日 |
| 新設法人が設立時に開始する職務について定めた場合 | 設立の日以後2か月を経過する日 |
届出どおりの日に、届出どおりの額を支給しないと、原則として支給額の全額が損金になりません。届出より少なく払った場合も、原則として同じ扱いです。業績が読めない時期に賞与を予定する場合は、金額を慎重に決めます。
退職給与と使用人兼務役員
役員の退職給与は、定期同額給与などの3つの種類とは別に扱われ、原則として損金になります。ただし、業績連動給与に当たるものは業績連動給与の要件を満たす必要があり、不相当に高額な部分は損金になりません。
部長などの使用人としての職務を兼ねる役員(使用人兼務役員)の使用人分の給与も、別の扱いになります。社長や代表取締役などは、使用人兼務役員になれません。
役員報酬の額を決めるときの考え方
役員報酬の額は、会社と役員個人の税金や社会保険料のバランスで考えます。報酬を増やすと会社の所得は減りますが、役員個人の所得税・住民税と社会保険料は増えます。
- 今期の売上と費用の見込みから、会社の利益を見積もる
- 役員の生活費や、本国への送金の必要額を確認する
- 会社の法人税等と、個人の所得税・住民税・社会保険料を試算する
- 期首から3か月以内に決議し、議事録を残す
役員報酬は期中に自由に変えられないため、利益の見込みが大きく外れると調整ができません。設立1期目は特に、無理のない金額から始めることが多くなります。
海外在住の役員・外国人役員の注意点
海外に住む役員への報酬の源泉徴収
日本法人の役員報酬は、その役員が海外で勤務していても、原則として日本の国内源泉所得になります。非居住者の役員に支払う場合は、支払の際に20.42%で源泉徴収します。例外は、海外支店長のように使用人として常時海外で勤務している場合です。
非居住者の役員に支払う報酬は、同じ人への年間の支払額が一定額を超える場合、「非居住者等に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書」を税務署に提出します。
中国本土や香港に住む取締役が、日本法人の役員を兼ねている場合が典型例です。租税条約の多くは、役員報酬について法人の所在地国でも課税できると定めています。親会社の所在地の税務と合わせて確認します。
役員が日本と海外を行き来している場合は、まず居住者か非居住者かを判定します。居住者なら源泉徴収税額表で、非居住者なら20.42%で源泉徴収するため、判定を誤ると税額が大きく変わります。
社会保険とビザへの影響
日本で役員報酬を受け取る代表者や役員は、原則として健康保険・厚生年金保険の被保険者になります。加入の手続は社会保険・労働保険の加入義務で解説しています。
経営・管理ビザで在留する経営者は、役員報酬の額が本人の生計と事業の安定性を示す材料になります。報酬を極端に低く設定すると、更新の審査で説明を求められることがあります。審査の考え方は経営・管理ビザの更新を参照してください。
TIMOAにできること
役員報酬は、会社法の決議、法人税の損金算入、源泉徴収、社会保険、ビザが関わる論点です。期首から3か月以内に月額を決め、議事録を残し、その期は同額で払うことが基本になります。
TIMOAは、提携する税理士・社会保険労務士・司法書士とともに、役員報酬の設計、株主総会議事録の作成、事前確定届出給与の届出、源泉徴収と社会保険の手続を支援します。詳しくは会計・税務・労務のページをご覧ください。
よくある質問
期の途中で役員報酬を増やせますか?
増やすことはできますが、臨時改定事由に当たらない増額部分は損金になりません。改定は原則として事業年度開始から3か月以内に行います。
役員に賞与を払うと損金になりますか?
事前確定届出給与として、期限までに税務署へ届け出て、届出どおりの日に届出どおりの額を払えば損金になります。届出と異なる支給は、原則として全額が損金になりません。
中国に住む取締役に役員報酬を払う場合の源泉徴収は?
日本法人の役員報酬は、国外で勤務していても原則として日本の国内源泉所得です。支払の際に20.42%で源泉徴収します。
役員報酬の額はどこで決めますか?
株式会社では、定款に定めがなければ株主総会の決議で決めます。決議の内容は議事録に残します。
参考・出典
- 国税庁 No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) www.nta.go.jp
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第2節第3款 定期同額給与 www.nta.go.jp
- 国税庁 役員給与に関するQ&A www.nta.go.jp
- 国税庁 源泉徴収のあらまし(非居住者等に対する源泉徴収) www.nta.go.jp