2026年10月1日時点の制度に基づいています。
外国企業でも、日本で消費税の課税事業者として申告すれば、適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けられます。国内に事務所がない国外事業者は、納税管理人の届出に加えて、税務代理人の選任が登録の条件です。2026年10月からは、登録のない相手からの仕入れに関する経過措置も変わりました。
インボイス制度とは:外国企業に関係する理由
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、2023年10月1日に始まった消費税の仕入税額控除の方式です。買い手が仕入税額控除を受けるには、原則として、売り手が発行したインボイス(適格請求書)を保存する必要があります。
インボイスを発行できるのは、税務署長の登録を受けた事業者だけです。登録を受けられるのは、消費税の課税事業者に限られます。免税事業者が登録すると、課税事業者として消費税の申告が必要になります。
日本の取引先が課税事業者の場合、登録のない相手からの仕入れは、控除できる額が一部に制限されます。そのため、日本企業と継続して取引する外国企業は、取引先から登録番号を尋ねられることが増えています。
インボイスの記載事項と登録番号
インボイスには、発行事業者の名称と登録番号のほか、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した対価の額と適用税率、消費税額、受け手の名称を記載します。
登録番号は、法人番号を持つ事業者なら「T+法人番号(13桁)」です。登録後は、取引先から求められたときにインボイスを交付し、その写しを保存する必要があります。登録されると、名称や登録番号が国税庁の公表サイトで公開されます。取引先は、このサイトで登録の有無を確認できます。
外国企業の事業形態ごとの対応
外国企業がとるべき対応は、日本での事業の形によって変わります。まず、自社がどれに当たるかを確認します。
| 事業の形 | 消費税上の立場 | インボイス登録のポイント |
|---|---|---|
| 日本法人(子会社)を設立 | 内国法人 | 設立した課税期間の初日から登録できる特例がある |
| 日本支店などの国内拠点がある外国法人 | 国外事業者 | 国外事業者用の申請手続で登録する |
| 国内に拠点がない外国法人 | 特定国外事業者 | 納税管理人の届出と税務代理人の選任が条件 |
支店と子会社のどちらで進出するかは、税務の扱いにも影響します。比較は日本支店と日本法人(子会社)の違いで解説しています。
国内に拠点がない国外事業者の登録要件
国内に事務所や事業所を持たない国外事業者を「特定国外事業者」といいます。特定国外事業者が登録を受けるには、次の体制が必要です。
- 消費税の課税事業者として申告・納付すること
- 国内に住所などがある人を納税管理人に定め、「消費税納税管理人届出書」を提出していること
- 消費税に関する税務代理の権限を持つ税務代理人(税理士など)がいること
納税管理人は、申告書の提出や税務署からの書類の受け取りなどを、本人に代わって行う人です。税務代理人は、申告などの税務代理を行う税理士などを指します。
申請時には、税務代理権限証書の添付が求められます。申請書は郵送またはe-Taxで提出します。郵送先や様式は、国税庁の国外事業者向けの案内で確認します。登録の効力は、税務署長が登録した日から生じます。
登録を取り消された特定国外事業者は、取消しの日から1年間、再度の登録を拒否されることがあります。登録の前に、申告と納付を確実に行う体制を整えておくことが大切です。
国外事業者は簡易課税と2割特例を使えない場合がある
2024年10月1日以後に始まる課税期間から、その課税期間の初日に恒久的施設(PE)を持たない国外事業者は、簡易課税制度を適用できません。2024年9月30日までに簡易課税の選択届出書を出していても同じです。
2割特例も同様に対象外となりました。PEのない国外事業者は、売上と仕入れの税額を集計する一般課税で申告することになります。
2割特例の終了と2026年10月からの経過措置の変更
インボイス制度には、事業者の負担を和らげる経過措置があります。令和8年度の税制改正で、その内容が見直されました。
2割特例は2026年9月30日を含む課税期間まで
2割特例は、免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者が、売上税額の2割を納付税額にできる特例です。この特例は、2026年9月30日までの日を含む課税期間で終了します。
後継の「3割特例」は、免税事業者から登録した個人事業者の2027年分と2028年分が対象です。法人は3割特例を使えません。2割特例(3割特例)を使った事業者が簡易課税へ円滑に移れるよう、届出の時期に関する措置も設けられています。届出のタイミングは国税庁の案内で確認します。
免税事業者等からの仕入れの控除割合
登録のない相手からの仕入れでも、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があります。改正で適用期限が2年延長され、割合は次のとおりになりました。割合は、課税仕入れを行った時期で決まります。
| 課税仕入れの時期 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以降 | 0%(控除できない) |
さらに改正により、同じ相手からの課税仕入れの合計額が、その年または事業年度で1億円を超える場合、超える部分にはこの経過措置を使えないこととされました。改正前の上限は10億円でした。この上限の適用が始まる時期と計算の方法は、国税庁の資料で確認します。
経過措置の割合は買い手側の控除の計算に使うもので、売り手である外国企業が申告する税額には影響しません。ただし、日本の取引先にとっては、登録のない相手との取引ほど負担が増えます。
取引先の控除割合が下がるほど、未登録のままの取引は、価格や条件の見直しを求められやすくなります。日本企業との取引が多い外国企業は、登録の要否を早めに判断しましょう。
国外からデジタルサービスを提供する場合の扱い
インターネットを通じた役務の提供(電気通信利用役務の提供)は、取引の相手によって、誰が申告・納税するかが異なります。
| 区分 | 例 | 申告・納税する人 |
|---|---|---|
| 事業者向け | 企業向けの広告配信など | 役務を受けた国内事業者(リバースチャージ方式) |
| 消費者向け | 電子書籍や音楽の配信など | 提供した国外事業者 |
| 消費者向け(指定プラットフォーム経由) | 指定を受けたアプリストアなどを通じた配信 | 特定プラットフォーム事業者 |
事業者向けの役務を提供する国外事業者には、その取引がリバースチャージの対象である旨を、あらかじめ表示する義務があります。
2025年4月1日からは「プラットフォーム課税」が始まりました。国外事業者が、国税庁長官の指定を受けたプラットフォームを介して消費者向けに配信し、対価をプラットフォーム経由で受け取る場合、プラットフォーム事業者が申告・納税します。指定の要件の一つは、国内の消費者向け取引で収受する対価が、課税期間中に50億円を超えることです。
日本法人を設立した場合の登録のタイミング
日本法人(子会社)を設立する場合は、設立初年度から登録するかどうかを、設立前に決めておくと安心です。
- 資本金1,000万円以上の新設法人は、設立時から消費税の課税事業者です。
- 資本金1,000万円未満の法人は、大規模な企業グループに属する場合などを除き、原則として設立当初は免税事業者です。免税事業者に当たる法人が登録する場合に、課税事業者選択届出書も必要かどうかは、登録の時期と経過措置によって異なります。
- 設立した課税期間の初日から登録を受けたい旨を書いた申請書を、その課税期間の末日までに出せば、初日にさかのぼって登録を受けたものとみなされます。
- 課税期間の途中から登録を受ける場合などは、登録希望日や申請の期限に決まりがあります。日付は国税庁の案内で確認してから申請します。
設立後に必要なほかの届出は、会社設立後の届出一覧と期限にまとめています。法人税や地方税を含む全体像は、日本法人にかかる税金の全体像をご覧ください。
登録の前に確認したいこと
- 日本の取引先の多くが課税事業者か、それとも消費者か
- 日本での売上の規模と、課税事業者になった場合の申告・納付の負担
- 納税管理人と税務代理人を、だれに依頼するか
- 登録後に、記載事項を満たしたインボイスを発行できる請求書の様式とシステムがあるか
登録すると、売上が少ない年でも消費税の申告が必要になります。登録をやめる場合も届出の期限があるため、手続の前に税理士と方針を決めておきます。
TIMOAにできること
外国企業のインボイス対応は、事業の形と取引先の構成によって答えが変わります。登録の要否、納税管理人と税務代理人の手配、日本法人設立時の届出の順番を、まとめて整理することが大切です。
TIMOAは、提携する税理士と連携し、登録の判断から申請、設立後の申告体制づくりまでを支援します。詳しくは会計・税務・労務のサポートをご覧ください。
よくある質問
外国企業でもインボイス発行事業者に登録できますか?
できます。消費税の課税事業者として申告することが前提で、国内に拠点がない場合は納税管理人の届出と税務代理人の選任も必要です。
国外事業者は2割特例や簡易課税を使えますか?
課税期間の初日に恒久的施設を持たない国外事業者は、2024年10月1日以後に始まる課税期間から、2割特例も簡易課税も使えません。2割特例自体も、2026年9月30日を含む課税期間で終了しています。
登録していないと、日本の取引先にどんな影響がありますか?
取引先は仕入税額の全額を控除できません。2026年10月1日から2028年9月30日までの仕入れは、仕入税額相当額の70%の控除にとどまります。
日本法人を設立した初年度から登録できますか?
できます。設立した課税期間の末日までに、初日から登録を受けたい旨を記載した申請書を提出すれば、初日にさかのぼって登録を受けたものとみなされます。免税事業者に当たる法人が登録する場合に、ほかにどの届出が必要かは登録の時期によって異なるため、国税庁の案内で確認します。
参考・出典
- 国税庁 インボイス制度に係る経過措置が変わります(令和8年度税制改正)(PDF) www.nta.go.jp
- 国税庁 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国外事業者用) www.nta.go.jp
- 国税庁 No.6505 簡易課税制度 www.nta.go.jp
- 国税庁 No.6118 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係 www.nta.go.jp
- 国税庁 No.6568 プラットフォーム課税 www.nta.go.jp