会計・税務・労務

海外親会社への配当と源泉税|租税条約の届出と送金までの手続

日本法人が海外親会社に配当を払うときは、国内法で20.42%を源泉徴収します。中国本土の親会社なら日中租税協定で10%、香港の親会社なら5%または10%に軽減できます。軽減には、最初の支払日の前日までの届出が必要です。

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TIMOA編集部
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2026年10月1日時点の制度に基づいています。

日本法人が海外親会社に配当を支払うときは、支払の際に所得税と復興特別所得税を源泉徴収します。非上場の日本法人の配当なら、国内法の税率は20.42%です。親会社が中国本土の法人なら日中租税協定で10%、香港の法人なら日港租税協定で5%または10%が上限になり、最初の支払日の前日までに届出書を出せば、支払時から軽減された税率を使えます。

配当の前に確認する会社法の手続

源泉税の前に、日本の会社法上、配当ができる状態かを確認します。株式会社の剰余金の配当には、主に次のルールがあります。

  • 株主総会の決議:原則として、株主総会で配当財産の種類、総額、効力発生日を決めます。
  • 分配可能額の範囲内:配当できるのは、会社法で計算する分配可能額までです。
  • 純資産額300万円の制限:純資産額が300万円未満の会社は配当できません。

取締役会を置く株式会社は、定款で定めれば、1事業年度の途中に1回、取締役会の決議で中間配当をすることもできます。

親会社が100%株主でも、決議の議事録は必ず作成します。分配可能額を超える配当は、後から返還などの問題になります。決算の数字が固まってから、配当額を決めるのが基本です。

配当にかかる日本の源泉税率

外国法人に支払う配当は、日本の国内源泉所得です。日本法人は、支払の際に源泉徴収し、支払った月の翌月10日までに税務署へ納付します。親会社の所在地によって、適用できる税率は次のとおりです。

配当を受け取る親会社 源泉税率 根拠
条約の届出をしない場合(非上場株式の配当) 20.42% 国内法(所得税20%と復興特別所得税)
中国本土の法人 10% 日中租税協定
香港の法人(議決権株式の10%以上を6か月以上保有) 5% 日港租税協定
香港の法人(上記以外) 10% 日港租税協定

租税条約の限度税率が国内法の税率以下になる場合は、復興特別所得税を上乗せする必要はありません。中国本土の親会社なら、10%ちょうどで源泉徴収します。なお、令和8年度の税制改正で防衛特別所得税が創設され、令和9年(2027年)1月1日以後に生ずる所得からは、所得税に加えて防衛特別所得税(所得税額の1%)と、税率を1.1%に引き下げた復興特別所得税をあわせて源泉徴収します。2つの税率の合計は従来の2.1%と変わらないため、源泉徴収税額の計算方法は変わらないと国税庁は案内しています。

中国本土と香港では、適用される条約が別です。香港の法人に日中租税協定は使えません。日中租税協定の全体像は日中租税条約のポイントで解説しています。

計算例:中国本土の親会社に1,000万円を配当する場合

  • 届出書を出した場合:源泉税は100万円(10%)で、親会社への送金額は900万円です。
  • 届出書を出していない場合:源泉税は204万2,000円(20.42%)で、送金額は795万8,000円です。差額は後から還付請求をします。

源泉税は、配当を受け取る親会社の税金を、日本法人が預かって納めるものです。日本法人の費用にはなりません。

決議したまま支払わない場合

配当の支払が確定した日から1年を経過しても支払っていない場合は、その1年を経過した日に支払があったものとみなして、源泉徴収をしなければなりません。親会社への送金を先送りする場合も、源泉税の納付は先送りできない点に注意します。

租税条約の届出の手続

条約の軽減税率を支払時から使うには、親会社が「租税条約に関する届出書(配当に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除)」(様式1)を作成します。提出の流れは次のとおりです。

  1. 親会社が、配当の支払者(日本法人)ごとに届出書を作成する
  2. 親会社が、届出書を日本法人に提出する
  3. 日本法人が、最初の支払日の前日までに、所轄の税務署長に提出する
  4. 日本法人が、限度税率で源泉徴収して納付する

届出書には、親会社の名称や所在地、保有する株式の数などを記載します。香港の親会社が5%の税率を使う場合は、保有割合と保有期間の要件を満たしていることを確認します。

特典条項がある租税条約を使う場合は、特典条項に関する付表(様式17)と、相手国の居住者証明書も必要になります。親会社の所在地の条約で、どの書類が必要かを事前に確認します。

届出が間に合わなかった場合

期限までに届出書を出していなければ、日本法人は国内法の20.42%で源泉徴収します。この場合でも、後から「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を出せば、限度税率との差額の還付を受けられます。ただし、還付までには時間がかかります。最初の配当の前に、届出書を準備しておくことをおすすめします。

送金のときの外為法の報告

日本の居住者である日本法人が、非居住者である親会社に支払をするときは、外為法の報告に注意します。1回の支払が3,000万円相当額を超える場合は、「支払又は支払の受領に関する報告書」の提出が必要です。銀行を通じて送金する場合は、銀行等を経由して提出する様式を使います。

報告義務を負うのは、居住者である日本法人です。非居住者である親会社には報告義務はありません。3,000万円相当額を超えるかどうかは、1回の支払の実行額で判定します。外貨建ての支払では、報告が必要かどうかを判定するための円への換算方法が定められています。

銀行からは、送金の目的として配当の決議を示す書類(議事録など)の提出を求められることがあります。決議から送金までの書類を、まとめて保管しておきます。

配当・ロイヤルティ・利息の違い

日本法人から親会社に資金を戻す方法は、配当だけではありません。主な方法を比べると、次のようになります。

方法 日本法人の法人税 源泉税(中国本土の親会社) 注意点
配当 損金にならない 10%(条約) 分配可能額の範囲内に限られる
ロイヤルティ(使用料) 原則として損金になる 10%(条約) 料率の根拠が必要。移転価格の対象
貸付金の利息 原則として損金になる 10%(条約) 金利水準と契約書が必要。移転価格の対象

使用料や利息は損金になりますが、親会社との取引価格が第三者間の水準と違うと、移転価格税制で否認されるおそれがあります。考え方は移転価格税制の基本を参照してください。日本法人にかかる税金の全体像は日本法人にかかる税金の全体像にまとめています。

親会社側の課税

日本で源泉徴収された配当が、親会社の所在地でどう課税されるか、日本の源泉税を控除できるかは、その国・地域の税制で決まります。親会社側の税務担当者とも、事前に確認しておきます。配当の時期や金額を決める前に、日本と親会社側の双方の税金を比べておくと、資金を戻す方法を選びやすくなります。

配当の後に保管しておく書類

海外親会社への配当は、税務調査で確認されやすい取引です。次の書類を、事業年度ごとにまとめて保管します。

  • 配当を決議した株主総会(または取締役会)の議事録
  • 分配可能額の計算の根拠となる決算書類
  • 租税条約に関する届出書の控え
  • 源泉所得税の納付書の控え
  • 送金の記録と、外為法の報告書の控え

配当の金額、源泉税率、送金額が、これらの書類の間で一致しているかを確認します。条約の限度税率を使った場合は、届出書の提出日が最初の支払日より前であることも、書類で示せるようにしておきます。

TIMOAにできること

海外親会社への配当は、会社法の決議、源泉税の計算と納付、租税条約の届出、外為法の報告という4つの手続がつながっています。とくに条約の届出は、最初の支払日の前日が期限です。

TIMOAは、提携する税理士・司法書士とともに、配当額の検討、議事録の作成、租税条約の届出書の準備、源泉税の納付、送金書類の整理を支援します。中国語での親会社とのやり取りにも対応します。詳しくは会計・税務・労務のページをご覧ください。

よくある質問

中国本土の親会社に配当する場合の源泉税率は?

日中租税協定により10%が上限です。最初の支払日の前日までに租税条約に関する届出書を出せば、支払時に10%で源泉徴収できます。

香港の親会社に配当する場合は?

日港租税協定により、議決権株式の10%以上を6か月以上保有する親会社なら5%、それ以外は10%が上限です。

届出書の提出が配当の支払に間に合わなかったら?

支払時は国内法の20.42%で源泉徴収します。その後、租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求をすれば、限度税率との差額の還付を受けられます。

配当を決議したまま、支払っていない場合も源泉徴収は必要ですか?

支払の確定した日から1年を経過しても支払っていない場合は、その1年を経過した日に支払があったものとみなして源泉徴収が必要です。

参考・出典

  1. 国税庁 No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率 www.nta.go.jp
  2. 国税庁 A3-1 租税条約に関する届出(配当に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除) www.nta.go.jp
  3. 財務省 中華人民共和国香港特別行政区との租税協定のポイント www.mof.go.jp
  4. 日本銀行 外為法の報告制度について www.boj.or.jp

執筆

TIMOA編集部

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法律・税務上の助言ではありません。制度は改正されることがあるため、具体的なお手続きの前にご相談ください。

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