2026年10月1日時点の制度に基づいています。
日本で商標権を得るには、特許庁に出願し、審査を経て登録料を納める必要があります。日本は先願主義のため、同じような商標は先に出願した人が登録を受けます。中国で登録済みの商標でも日本では効力がないため、日本進出を決めた段階で出願することが大切です。
日本の商標制度の基本:先願主義と属地主義
商標は、商品やサービスの「目印」となる文字・図形・記号などです。日本の商標制度には、まず押さえるべき原則が二つあります。
先願主義:使った順ではなく出願した順
同一または類似の商標の出願が重なった場合、実際に先に使っていたかどうかに関係なく、先に出願した人に登録が認められます。海外で長く使ってきたブランドでも、日本で他人に先に出願されると、登録を受けられない可能性があります。
属地主義:権利は国ごとに発生する
商標権の効力は、登録した国の中に限られます。中国国家知識産権局(CNIPA)で登録した商標は、日本では保護されません。日本で使う予定があれば、日本での登録が別に必要です。
なお、法務局での商号登記は、商標登録とは別の制度です。会社名を登記しても、その名称の商標権を得たことにはなりません。会社設立の手続は外国人・外国企業が日本で会社を設立する流れで解説しています。
中国企業が日本で早めに商標出願すべき理由
- 第三者による先取り出願:販売代理店の候補や取引先、ブローカーなどが、先に日本で出願するおそれがあります。
- 取り戻しの負担が大きい:商標法には、外国で周知な商標と同一・類似の商標を不正の目的で出願しても登録しない規定(第4条第1項第19号)があります。ただし、外国での周知性や不正の目的を示す必要があり、負担は小さくありません。
- 表記の違い:中国で登録した簡体字の商標と、日本で実際に使う表記(日本の字体、カタカナ、ローマ字)が違うことがあります。日本で使う表記での出願を検討します。
- 審査に時間がかかる:出願から最初の審査結果までは数か月以上かかります。発売や開業の直前に出願しても、登録が間に合わないことがあります。
出願のタイミングの目安は、代理店との交渉、展示会への出展、クラウドファンディング、ウェブでの告知など、ブランドを日本で公にする前です。
商標登録の流れ(出願から登録まで)
- 先行商標の調査:特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で、同一・類似の商標が出願・登録されていないかを調べます。
- 商標と指定商品・役務の決定:登録したい商標と、それを使う商品・サービス(指定商品・指定役務)、その区分を決めます。
- 出願:願書を特許庁に提出し、出願料を納めます。オンライン出願と書面での出願があります。
- 審査:方式の審査のあと、審査官が登録できる商標かどうかを審査します。
- 拒絶理由通知への対応:問題が指摘された場合は、意見書や手続補正書で反論・修正します。
- 登録査定と登録料の納付:登録査定の謄本の送達日から30日以内に登録料を納めると、設定登録されて商標権が発生します。
| 段階 | 期間・期限の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 出願から最初の審査結果まで | 2024年の年平均は6.9か月(特許行政年次報告書2025年版) | 特許庁は審査室(区分)ごとの審査着手の見通しを公表しています |
| 拒絶理由通知への応答 | 国内居住者は40日、在外者は3か月 | 請求により期間を延長できる場合があります |
| 登録料の納付 | 登録査定の謄本の送達日から30日以内 | 登録料納付書の提出など所定の手続で納付します。請求により納付期間を30日延長できます |
| 登録異議の申立て | 商標掲載公報の発行日から2か月以内 | 第三者が登録に異議を述べられる期間です |
| 存続期間 | 設定登録日から10年 | 更新登録の申請で10年ずつ延長できます |
出願の内容は、公開商標公報で公開されます。出願した時点で、商標と指定商品・役務は第三者からも確認できる状態になります。
すでに使用している商標や、使用の準備が相当程度進んでいる商標は、要件を満たせば早期審査を申請できます。発売時期が決まっている場合は、利用を検討します。
日本国内に住所や営業所がない外国企業は、原則として日本国内の代理人(弁理士など)を通じて手続きします。日本法人を設立済みであれば、日本法人と海外の本社のどちらを出願人にするかも、グループ内の権利管理の観点から決めておきます。
区分の選び方と登録にかかる費用
区分と指定商品・役務
商品・サービスは、国際分類に基づき第1類から第45類までの「区分」に分かれています。第1類から第34類が商品、第35類から第45類がサービス(役務)です。特許庁に納める料金は、区分の数に応じて増えます。
- いま扱う商品・サービスだけでなく、近い将来の展開も含めて検討します。
- 指定を広げすぎると、先行商標とぶつかる可能性が高まります。また、継続して3年以上日本で使用していない指定商品・役務は、第三者から不使用取消審判を請求されることがあります。
- 例えばアプリを提供するIT企業なら、ダウンロード可能なソフトウェア(第9類)とオンラインのサービス(第42類など)が候補になります。実際の区分は、事業内容に合わせて専門家と確認します。
特許庁に納める費用
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 出願料 | 3,400円+(区分数×8,600円) |
| 登録料(10年分を一括納付) | 区分数×32,900円 |
| 登録料(5年ごとの分納、前期・後期それぞれ) | 区分数×17,200円 |
例えば2区分で出願・登録する場合、特許庁に納める費用は、出願料20,600円と登録料(一括)65,800円です。このほか、書面で出願した場合の電子化手数料や、弁理士に依頼する場合の報酬が別にかかります。料金は改定されることがあるため、手続きの前に特許庁の料金一覧で確認してください。
マドプロ(国際登録出願)で日本を指定する場合
マドリッド協定議定書(マドプロ)を使うと、本国の商標出願・登録を基礎に、世界知的所有権機関(WIPO)の国際登録を通じて複数の国をまとめて指定できます。中国で出願・登録した商標を基礎に、日本を指定することも可能です。
- 日本を指定しても、日本の特許庁が日本の法律に基づいて審査します。登録が保証されるわけではありません。
- 国際登録日から5年間は、基礎となる本国の出願・登録に依存します。基礎の出願が拒絶されたり、登録が取り消されたりすると、国際登録も取り消されることがあります(いわゆるセントラルアタック)。この場合、一定期間内であれば各国の国内出願に変更する救済があります。
- 商標は基礎と同一で、指定商品・役務も基礎の範囲内に限られます。日本で使う表記や商品の範囲が中国と異なる場合は、日本への直接出願のほうが合うことがあります。
日本で商標を出願する前のチェックリスト
- 日本で使う表記(漢字・カタカナ・英字、ロゴ)を確定したか
- J-PlatPatで同一・類似の商標を調べたか
- 指定商品・役務と区分を、事業計画と照らして決めたか
- 出願人を海外本社と日本法人のどちらにするか決めたか
- 代理店や取引先との契約に、商標の帰属や無断出願の禁止を定めたか
- 直接出願とマドプロの費用・期間・リスクを比べたか
日本法人で顧客データを扱う場合は、商標と並んで個人情報の管理も重要です。個人情報保護法の外国への個人データ移転のルールもあわせて確認してください。拠点の形を検討中の方は、日本支店と日本法人(子会社)の違いも参考になります。
TIMOAにできること
日本の商標は先願主義で、権利は国ごとに分かれます。中国で登録済みでも、日本進出の前に日本での出願を済ませておくことが、ブランドを守る基本です。
TIMOAは、提携する弁理士とともに、先行商標の調査、区分と指定商品・役務の整理、出願から登録・更新までの手続きを、中国語と日本語でサポートします。会社設立や契約書の整備とあわせたご相談も可能です。詳しくは知財・リスク・コンプライアンスのページをご覧ください。
よくある質問
中国で商標登録していれば、日本でも保護されますか?
保護されません。商標権は国ごとに発生するため、日本で使う商標は日本の特許庁で登録を受ける必要があります。
日本で商標登録するまでどのくらいかかりますか?
出願から最初の審査結果までの期間は、2024年の年平均で6.9か月でした。拒絶理由通知への対応が必要になると、さらに時間がかかります。
商標を使い始める前でも出願できますか?
使用する意思があれば、使用開始前でも出願できます。ただし、登録後に継続して3年以上使用しないと、不使用取消審判で取り消されることがあります。
マドプロと日本への直接出願はどちらがよいですか?
マドプロは複数国をまとめて手続きできますが、5年間は本国の基礎出願・登録に依存します。日本で使う表記や指定商品が本国と異なる場合は、直接出願が合うこともあります。
参考・出典
- 特許庁 初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~ www.jpo.go.jp
- 特許庁 商標制度の概要 www.jpo.go.jp
- 特許庁 産業財産権関係料金一覧 www.jpo.go.jp
- 特許庁 マドリッド協定議定書の概要について www.jpo.go.jp
- 特許庁 特許行政年次報告書2025年版(主要統計) www.jpo.go.jp