2026年10月1日時点の制度に基づいています。
重要土地等調査法は、防衛関係施設などの周辺や国境離島等にある土地・建物の利用状況を国が調査し、施設の機能を阻害する利用を規制する法律です。外国人や外国企業であることを理由に、土地の購入そのものを禁じる法律ではありません。ただし、特別注視区域で200㎡以上の土地・建物を売買するときは、契約の前に届出が必要です。
重要土地等調査法とは
正式名称は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」です。2021年6月に成立し、2022年9月20日に全面施行されました。所管は内閣府です。
目的は、安全保障上重要な施設の周辺や国境離島等の土地・建物が、施設の機能を妨げるために使われることを防ぐことです。国は区域を指定し、その中の土地・建物の所有者や利用状況を調査します。
対象となる「重要施設」は、次の3つです。
- 防衛関係施設(自衛隊や在日米軍の施設など)
- 海上保安庁の施設
- 生活関連施設(原子力関係施設など、政令で定める施設)
区域は内閣総理大臣が告示で順次指定しています。最新の指定区域と地図は、内閣府のウェブサイトで公表されています。
規制されるのは「機能阻害行為」
規制の対象は、土地を持つこと自体ではなく、施設の機能を妨げる利用です。政府の基本方針では、航空機の離着陸やレーダーの運用を妨げる工作物の設置などが例として示されています。区域内で住む、店や事務所を営むといった通常の利用を一般的に制限する趣旨ではないと説明されています。
注視区域と特別注視区域の違い
区域は、重要施設の周囲おおむね1,000mの範囲と、国境離島等の中から指定されます。施設の機能が特に重要なものなどの周辺は、規制の強い特別注視区域になります。
| 項目 | 注視区域 | 特別注視区域 |
|---|---|---|
| 指定される範囲 | 重要施設の周囲おおむね1,000m、国境離島等 | そのうち、施設の機能が特に重要なものなどの区域 |
| 利用状況の調査 | 対象 | 対象 |
| 機能阻害行為への勧告・命令 | 対象 | 対象 |
| 売買などの事前届出 | 不要 | 200㎡以上の土地・建物で必要 |
注視区域では、土地を買うときの届出は求められません。ただし、調査や勧告・命令の対象である点は特別注視区域と同じです。
特別注視区域で必要な事前届出の要件
特別注視区域では、次の3つにすべて当てはまると、契約の当事者に届出の義務が生じます。
- 土地・建物が特別注視区域内にある
- 面積が200㎡以上である
- 所有権などを移転・設定する売買などの契約を結ぶ
届出は、原則として契約を結ぶ前に、内閣総理大臣(窓口は内閣府)に対して行います。主な届出事項は次のとおりです。
- 当事者の氏名・名称、住所、国籍等
- 土地・建物の所在と面積
- 契約後の利用目的
この届出は許可の申請ではありません。ただし、届出の内容は国が利用状況を把握する基礎になります。利用目的は具体的に書けるよう、購入前に整理しておきます。
届出の実務で注意する点
届出は売主と買主の双方に関わる手続きです。仲介会社を含めて、だれがいつ届出を出すかを早めに決めます。契約日を先に決めてしまうと、届出が間に合わないことがあります。海外にいる買主の場合は、書類の準備や署名に時間がかかる点も考慮します。
物件が区域内かどうかは、内閣府が公表している告示と区域図で確認します。判断に迷う場合は、内閣府の重要土地等調査法コールセンター(0570-001-125、平日9時30分〜17時30分)にも問い合わせができます。
調査・勧告・命令と罰則
国は、区域内の土地・建物について、登記簿などの公簿や関係機関の情報を使い、所有者や利用状況を調べます。必要に応じて、所有者などに報告や資料の提出を求めることもあります。
施設の機能を阻害する利用(機能阻害行為)があると認められると、まず中止などの勧告が行われます。勧告に従わない場合は命令が出され、命令に違反すると刑事罰の対象になります。主な罰則は次のとおりです。
| 違反の内容 | 罰則 |
|---|---|
| 機能阻害行為の中止などの命令に従わない | 2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその両方 |
| 特別注視区域の届出をしない、虚偽の届出をする | 6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 報告や資料の提出に応じない、虚偽の報告をする | 30万円以下の罰金 |
法人の役員や従業員が違反した場合は、法人にも罰金が科されます(両罰規定)。なお、制定時の条文にある「懲役」は、刑法改正により2025年6月1日から「拘禁刑」に改められています。
外国人・外国企業が購入するときの確認ポイント
重要土地等調査法は、国籍を問わず、区域内の土地・建物を持つすべての人に適用されます。外国人・外国企業が購入する場合は、この法律に加えて、他の届出や報告が重なることがあります。契約の前に、次の点を確認します。
- 物件が注視区域・特別注視区域に入っていないか
- 特別注視区域で200㎡以上なら、届出を済ませてから契約する日程になっているか
- 非居住者が取得する場合、外為法に基づく報告が必要か
- 取引の規模によっては、国土利用計画法の届出が必要か
- 取得後の利用計画(建物の用途、工作物の設置など)に問題がないか
区域の指定は今後も追加される可能性があります。購入した後に区域に指定された場合も、その時点から調査や勧告・命令の対象になります。長く保有する予定の物件は、購入時だけでなく、保有中も指定の状況を確認します。
外為法の報告など、購入全体の流れは外国人が日本で不動産を買う流れと注意点で解説しています。日本法人への出資を通じて取得する場合は、外為法の対内直接投資の手続きもあわせて確認します。購入時にかかる税金は不動産を買うときの税金をご覧ください。
2026年の見直しの動き
外国人による土地取得のルールは、2026年に入り見直しの議論が進んでいます。2026年10月時点の主な動きは次のとおりです。
- 内閣官房の「外国人による土地取得等のルールの在り方検討会」が、2026年10月に提言をまとめました。安全保障上重要な施設の周辺や国境離島等の土地について、取得の段階で政府の許可を求める「許可制」の導入が盛り込まれています。報道によると、許可は取得者が外国人か日本人かを問わず求め、外国政府の強い影響下にある者などの取得は原則として許可しない案とされています。
- 担当大臣は2026年10月6日の記者会見で、提言を踏まえ、重要土地等調査法の改正案を速やかに国会に提出する考えを示しました。
- 国土交通省の「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」も、2026年8月に国土利用計画法の見直しに関する提言をまとめました。土地利用の継続的な把握や、取引と利用の段階を通じた指導監督が柱です。取引時の届出が必要な面積の基準を引き下げることなども盛り込まれたと報じられています。
許可制が導入されると、契約前に必要な手続きの期間や書類が変わる可能性があります。法人が取得する場合に、その法人を実質的に支配する人をどう確認するかも、あわせて議論されています。2026年10月には、上場会社を除く法人に実質的支配者の情報の届出を求める新しい法案が閣議決定されたと報じられています。
改正の内容や施行日は、本記事の時点では確定していません。購入を検討している場合は、契約の時点で適用されるルールを確認してから進めてください。
重要土地等調査法のまとめ
重要土地等調査法は、土地の取得を国籍で一律に禁じる法律ではありません。特別注視区域で200㎡以上を売買する場合は、契約前の届出が必要です。どの区域でも、施設の機能を妨げる利用は勧告・命令の対象になります。2026年には取得段階の許可制を含む見直しが議論されており、今後の改正に注意が必要です。
TIMOAは、提携する司法書士・行政書士などの専門家とともに、物件が区域に入るかの確認、届出を含む購入スケジュールの整理、外為法の報告や登記の準備をサポートします。詳しくは不動産のサービスをご覧ください。
よくある質問
外国人は重要土地等調査法の区域内で土地を買えませんか?
現行法では、外国人であることを理由に購入を禁じる規定はありません。ただし、特別注視区域で200㎡以上の売買をする場合は契約前の届出が必要で、区域内では利用状況の調査や勧告・命令の対象になります。
注視区域で土地を買うときも届出が必要ですか?
注視区域では、売買の事前届出は求められていません。届出が必要なのは特別注視区域で200㎡以上の土地・建物を売買する場合です。
届出をしないで契約するとどうなりますか?
届出をしない、または虚偽の届出をした場合は、6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。法人も罰金の対象になる両罰規定があります。
物件が区域内かどうかはどこで確認できますか?
内閣府が公表している区域の告示と地図で確認できます。判断に迷う場合は、内閣府の重要土地等調査法コールセンターにも問い合わせができます。
参考・出典
- 内閣府 重要土地等調査法(公式ページ) www.cao.go.jp
- 内閣官房 外国人による土地取得等のルールの在り方検討会 提言 www.cas.go.jp
- 内閣府 小野田内閣府特命担当大臣記者会見要旨(令和8年10月6日) www.cao.go.jp
- 国土交通省 土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議 提言資料 www.mlit.go.jp