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雇用契約書と就業規則の基本|日本の労働法で会社が守るべきルール

日本で社員を雇うと、国籍に関係なく労働基準法などが適用されます。採用時には労働条件を書面などで明示し、常時10人以上を雇う事業場では就業規則の作成と届出が必要です。2024年4月の明示ルール改正も含め、雇用契約書と就業規則の基本をまとめました。

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TIMOA編集部
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2026年10月1日時点の制度に基づいています。

日本で社員を雇う会社は、国籍や本社の所在地に関係なく、労働基準法や労働契約法などのルールに従います。採用時には労働条件を書面などで明示し、常時10人以上の労働者がいる事業場では就業規則を作成して労働基準監督署に届け出ます。この記事では、雇用契約書と就業規則の基本と、外国企業が見落としやすい点を整理します。

日本で社員を雇うときに適用される労働法

日本国内で働く社員には、日本の労働法が適用されます。中国本土や香港の本社が雇用契約の当事者でも、日本で労務を提供していれば同じです。

  • 労働基準法:労働時間、休日、賃金、解雇予告など、最低限の労働条件を定めます。これを下回る契約の部分は無効になります。
  • 労働契約法:契約の成立・変更、就業規則との関係、解雇や有期契約のルールを定めます。
  • 最低賃金法:都道府県ごとの最低賃金を下回る賃金は認められません。
  • その他:男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働安全衛生法なども適用されます。

雇用契約の準拠法を本国の法律にすることは可能です。しかし、労働基準法は日本で働く人に当然に適用されます。また、社員が意思表示をすれば、日本の労働法の強行規定も適用されます(法の適用に関する通則法第12条)。本国の契約書のひな形をそのまま使うと、日本の基準を下回る条項が無効になるおそれがあります。

雇用契約書と労働条件の明示

会社は、労働契約を結ぶときに労働条件を明示しなければなりません(労働基準法第15条)。一般には「労働条件通知書」を交付します。双方が署名する「雇用契約書兼労働条件通知書」の形にすると、合意の内容も残せます。

書面で明示する主な事項

区分 主な内容
契約期間 期間の定めの有無。有期契約は更新の基準と、更新上限の有無・内容
就業場所・業務 雇入れ直後の場所と業務、将来の「変更の範囲」
労働時間 始業・終業の時刻、時間外労働の有無、休憩、休日、休暇
賃金 決定・計算・支払の方法、締切日と支払日
退職 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

書面での交付が原則です。社員が希望した場合は、FAXや電子メールなどで明示することもできます。昇給、賞与、退職金などは、定めがある場合に明示します。

2024年4月からの明示ルールの改正

2024年4月1日から、労働基準法施行規則の改正により明示事項が増えました。

  • すべての社員について、就業場所と業務の「変更の範囲」を明示します。
  • 有期契約の社員には、通算契約期間や更新回数の上限の有無と内容を明示します。上限を後から新設・短縮する場合は、事前に理由を説明します。
  • 無期転換の申込みができる更新のたびに、申込みができる旨と、無期転換後の労働条件を明示します。

本社からの出向者や、将来の海外異動を予定する社員については、変更の範囲の書き方を特に検討します。

有期契約と無期転換ルール

契約期間を定める場合、1回の契約期間は原則3年が上限です(専門的知識を持つ人などは5年)。同じ会社との有期契約が更新されて通算5年を超えると、社員は期間の定めのない契約への転換を申し込めます(労働契約法第18条)。会社はこの申込みを拒めません。

契約更新を繰り返した後の雇止めは、更新への合理的な期待があると、解雇と同じように制限されることがあります。有期契約を使う場合は、更新の基準と上限を最初から明示しておくことが重要です。

就業規則の作成・届出義務と記載事項

常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届け出ます(労働基準法第89条)。10人には、正社員だけでなくパートタイムや有期契約の社員も含みます。人数は会社全体ではなく、事業場(支店・工場など)ごとに数えます。

作成・届出の流れ

  1. 規則案を作成します(厚生労働省のモデル就業規則が参考になります)。
  2. 過半数労働組合、ない場合は過半数代表者の意見を聴きます(第90条)。
  3. 意見書を添付して、労働基準監督署に届け出ます。
  4. 掲示、書面の交付、社内システムでの閲覧などで社員に周知します。

就業規則は、社員に周知されて初めて効力を持ちます。届け出ただけで周知していない規則は、トラブルの際に根拠として使えないおそれがあります。

必ず記載する事項

  • 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇
  • 賃金の決定・計算・支払の方法、締切り・支払の時期、昇給
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

退職金、賞与、懲戒、安全衛生などは、制度を設ける場合に記載します。懲戒処分を行うには、懲戒の種類と事由を就業規則に定めておく必要があります。合理的な内容の就業規則が周知されていれば、その内容が個々の労働契約の内容になります(労働契約法第7条)。就業規則を下回る個別契約は、その部分が就業規則の基準まで引き上げられます。

労働時間・休日・賃金の基本ルール

項目 主なルール
法定労働時間 1日8時間・1週40時間
時間外・休日労働 労使協定(36協定)の締結と届出が必要
時間外労働の上限 原則月45時間・年360時間。特別条項でも年720時間以内、休日労働を含め月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内
割増賃金 時間外25%以上。月60時間を超える部分は50%以上(中小企業も2023年4月から)
年次有給休暇 6か月継続勤務し出勤率8割以上で10日。10日以上付与する社員には年5日を取得させる義務

このほか、会社は労働者名簿、賃金台帳、出勤簿などを作成し、一定期間保存します。保存期間は原則5年ですが、当分の間は3年とする経過措置があります。

賃金は、通貨で、直接、全額を、毎月1回以上、一定の期日に支払うのが原則です。本国の慣行で年俸を年1回払いとする契約は、日本ではそのまま使えません。給与からの税金の差引きは源泉徴収と年末調整で、保険の手続は社会保険・労働保険の加入義務で解説しています。

解雇・退職と試用期間の注意点

日本では解雇の制限が厳しく、外国企業との認識の差が大きい分野です。

  • 解雇権の濫用:客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効です(労働契約法第16条)。
  • 解雇予告:少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払います(労働基準法第20条)。
  • 試用期間:雇入れから14日以内であれば解雇予告は不要ですが、解雇に合理的な理由が必要な点は変わりません。
  • 有期契約:期間途中の解雇は、やむを得ない事由がある場合に限られます。

業績不振を理由とする人員削減も、手順を踏まずに行うと無効と判断されることがあります。解雇を検討する段階で、弁護士や社会保険労務士に相談することをおすすめします。

外国人社員を雇う場合の追加の確認事項

  • 在留資格で認められた活動の範囲内の業務かどうかを確認します。
  • 外国人を雇い入れたときと離職したときは、ハローワークへ外国人雇用状況の届出をします。
  • 労働条件通知書は、母国語などの訳文を添えると、認識の違いを防げます。
  • 国籍を理由に賃金や労働時間などで差別的な取扱いをすることは禁止されています(労働基準法第3条)。

就労ビザの要件は外国人社員の採用と就労ビザをご覧ください。

まとめ

雇用契約では、労働条件の明示、就業規則の整備、労働時間と賃金のルール、解雇の制限の4点が基本です。本国の契約書や社内規程は、日本の法令に合わせて見直す必要があります。TIMOAは、提携する社会保険労務士・弁護士と連携し、労働条件通知書や就業規則の作成、36協定の締結・届出、外国人社員の受入れ準備を支援しています。詳しくは知財・リスク・コンプライアンスのサービスをご覧ください。

よくある質問

雇用契約書は必ず作らなければなりませんか?

法律上の義務は、労働条件を明示することです。労働条件通知書を交付すれば足りますが、双方が署名する雇用契約書を兼ねる形にすると、合意の内容が明確になります。

社員が9人の会社でも就業規則は必要ですか?

常時10人未満の事業場には作成・届出の義務はありません。ただし、服務規律や懲戒の根拠を明確にするため、作成しておくことが望ましいとされています。

外国人社員との契約を本国の法律で結べますか?

準拠法を選ぶこと自体はできます。ただし、日本で働く社員には労働基準法などが適用され、社員が求めれば日本の労働法の強行規定も適用されます。

試用期間中なら自由に解雇できますか?

試用期間中でも、解雇には客観的に合理的な理由が必要です。雇入れから14日を超えると、30日前の予告または解雇予告手当も必要になります。

参考・出典

  1. 厚生労働省 2024年4月から労働条件明示のルールが変わります muki.mhlw.go.jp
  2. 厚生労働省 2024年4月から労働条件明示事項が追加されます(リーフレット) www.mhlw.go.jp
  3. 厚生労働省 確かめよう労働条件 時間外・休日労働と割増賃金 www.check-roudou.mhlw.go.jp
  4. 厚生労働省 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます www.mhlw.go.jp

執筆

TIMOA編集部

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法律・税務上の助言ではありません。制度は改正されることがあるため、具体的なお手続きの前にご相談ください。

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