2026年10月1日時点の制度に基づいています。
労働者派遣事業を始めるには、厚生労働大臣の許可が必要です。申請は本社を管轄する都道府県労働局に行い、基準資産額2,000万円以上などの資産要件、派遣元責任者、事業所の基準を満たします。申請は、許可を受けたい日のおおむね3か月前までに行うよう案内されています。
労働者派遣事業とは:許可が必要な理由
労働者派遣とは、自社で雇用する労働者を他社に送り、その会社の指揮命令のもとで働かせることです。労働者派遣法により、事業として行うには許可が必要です。
以前は、常用雇用の労働者だけを派遣する「特定労働者派遣事業」は届出で足りました。2015年9月30日施行の改正でこの区分は廃止され、現在はすべて許可制です。
請負・人材紹介との違い
- 請負・業務委託:受託した会社が自社の労働者に指示を出します。発注者が直接指示すると、実態は派遣とみなされ、無許可派遣(いわゆる偽装請負)になるおそれがあります。
- 人材紹介:求職者と求人企業の雇用契約を仲介します。職業安定法の別の許可が必要です。詳しくは有料職業紹介事業の許可で解説しています。
派遣できない業務(適用除外業務)
次の業務には、許可を受けていても労働者を派遣できません。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 病院・診療所などでの医療関係業務(紹介予定派遣や産前産後休業の代替など一部の例外あり)
このほか、弁護士や税理士などの士業の業務も、原則として派遣の対象になりません。また、雇用期間が30日以内の日雇派遣は、一定の例外を除いて禁止されています。事業計画を立てる段階で、派遣先の業務がこれらに当たらないか確認します。
労働者派遣事業の許可要件
| 要件 | 主な内容 |
|---|---|
| 資産要件 | 基準資産額(資産総額-負債総額)が2,000万円×事業所数以上、基準資産額が負債総額の7分の1以上、自己名義の現金・預金が1,500万円×事業所数以上 |
| 派遣元責任者 | 事業所ごとに、派遣労働者100人ごとに1人以上を選任。雇用管理の経験などがあり、派遣元責任者講習を受講していること |
| 事業所 | 事業に使える独立した区画があり、面積はおおむね20㎡以上が目安とされる |
| 事業運営の体制 | 特定の会社だけに派遣する目的でないこと、個人情報の管理体制、派遣労働者のキャリア形成を支援する制度など |
| 欠格事由 | 一定の法令違反による刑罰を受けた、派遣事業の許可を取り消されてから5年を経過していない、などに当たらないこと |
資産要件は決算書で判断される
資産要件は、申請直前の決算の貸借対照表で判断します。設立直後の会社は、設立時の貸借対照表などで確認されます。現金・預金は残高証明書で示します。決算後に増資して要件を満たす場合は、公認会計士の監査を受けた中間・月次の決算で判断を受ける方法もあります。
新しく会社をつくる場合は、資本金を最初から要件以上に設計するのが確実です。設立費用や事務所の敷金を払うと純資産や預金が減るため、要件ぎりぎりの資本金では不足するおそれがあります。
派遣元責任者
派遣元責任者は、派遣労働者の苦情処理や派遣先との連絡調整を担います。申請前の一定期間内に、厚生労働大臣が定める派遣元責任者講習を受講しておく必要があります。日本の事業所で実際に業務を行える人を選びます。経験の要件として、成年に達した後3年以上の雇用管理の経験などが求められます。複数の事業所を兼ねることはできないため、事業所ごとに人を確保します。
キャリア形成支援と教育訓練
派遣元には、派遣労働者のキャリア形成を支援する義務があります。申請時には、段階的・体系的な教育訓練の計画や、キャリア・コンサルティングの相談窓口を示します。教育訓練は有給・無償で行うことが前提とされています。
許可申請に必要な主な書類
書類の様式や部数は、労働局の手引きで最新のものを確認します。主なものは次のとおりです。
| 区分 | 主な書類 |
|---|---|
| 申請書類 | 許可申請書、労働者派遣事業計画書 |
| 会社の書類 | 定款、登記事項証明書、役員の住民票の写しと履歴書 |
| 資産の書類 | 直近の貸借対照表と損益計算書、法人税の確定申告書の写し、納税証明書、預金残高証明書 |
| 体制の書類 | 派遣元責任者の履歴書と講習の受講証明書、事業所の賃貸借契約書や平面図、就業規則や個人情報の管理に関する規程 |
外国籍の役員がいる場合は、住民票の代わりとなる書類や翻訳が必要になることがあります。事前に労働局へ相談すると、準備の手戻りを減らせます。
許可申請の流れと費用
- 事前準備:資本金と資産の確認、事務所の確保、派遣元責任者の講習受講、就業規則などの整備
- 申請:事業計画書、決算書類、登記事項証明書などを、本社を管轄する都道府県労働局に提出
- 審査:書類審査と、事業所の実地調査
- 労働政策審議会の意見聴取を経て、厚生労働大臣が許可
- 許可証の交付後に事業開始
| 費用・期間 | 内容 |
|---|---|
| 許可手数料(新規) | 12万円+5万5千円×(事業所数-1)。収入印紙で納付 |
| 登録免許税(新規) | 9万円 |
| 更新手数料 | 5万5千円×事業所数 |
| 有効期間 | 新規は許可日から3年、更新後は5年 |
| 更新申請 | 有効期間が満了する日の3か月前まで |
手数料は収入印紙を申請書に貼って納付し、受理された後は返還されません。登録免許税は収入印紙ではなく現金で納付し、領収証書の原本を提出します。労働局の資料では、許可を受けたい日のおおむね3か月前までに申請するよう案内されています。事業を始めたい日から逆算し、余裕をもって準備します。
外国資本の会社・外国人を派遣する場合の注意点
会社設立と役員
外国資本の会社でも、日本の会社と同じ基準で審査されます。会社と役員が欠格事由に当たらないことを確認し、外国籍の役員については証明書類の翻訳などを準備します。定款の事業目的にも労働者派遣事業を入れておきます。
グループ会社への派遣の制限
海外の親会社が日本の関連会社に人を送る目的で、派遣会社をつくる例があります。しかし、派遣元がグループ会社に派遣する割合は、全体の8割以下(労働時間で計算)に抑える必要があります。また、離職して1年以内の人を、元の勤務先に派遣することは禁止されています。グループ内の人員の融通が主な目的なら、出向や直接雇用も比較します。
外国人を派遣労働者として雇用する
派遣労働者が外国人の場合、就労が認められる在留資格が必要です。さらに、派遣先での業務がその在留資格の範囲に収まっていなければなりません。たとえば「技術・人文知識・国際業務」では、単純作業が中心の業務には就けません。特定技能では、派遣での受入れが農業と漁業に限られています。在留資格ごとの要件は外国人社員の採用と就労ビザをご覧ください。
許可後に守るべき主なルール
- 同一労働同一賃金(2020年4月から):派遣先の労働者との均等・均衡を図る方式か、労使協定で賃金水準などを定める方式のどちらかで待遇を決める
- 派遣期間の制限:同じ事業所・同じ組織単位への派遣は原則3年まで
- 雇用安定措置:同じ組織単位に3年間派遣される見込みの人には、派遣先への直接雇用の依頼などの措置をとる
- 契約と条件の明示:派遣先と派遣契約を結び、派遣労働者には就業条件や待遇を書面などで明示する
- 情報公開と報告:マージン率などを公開し、毎年、事業報告書などを労働局に提出する
- 社会保険・労働保険:派遣労働者も要件を満たせば加入させる。対象と期限は社会保険・労働保険の加入義務で解説しています
TIMOAにできること
労働者派遣事業の許可は、資産要件、派遣元責任者、事業所の基準を満たし、労働局の審査を経て受けます。資本金の設計と事務所の確保は、会社設立の段階で決まるため、早めの計画が大切です。
TIMOAは、提携する社会保険労務士・行政書士と連携し、会社設立、資本金の設計、許可申請の準備、外国人スタッフの在留資格の確認までを支援します。詳しくは許認可・金融ライセンスのページをご覧ください。
よくある質問
労働者派遣事業の許可には、どのくらいの期間がかかりますか?
労働局の資料では、許可を受けたい日のおおむね3か月前までに申請するよう案内されています。書類の補正が入ると遅れるため、事業開始の予定日から逆算して準備します。
設立したばかりの会社でも許可を受けられますか?
受けられます。資産要件は直近の決算や設立時の貸借対照表で判断されるため、資本金の額を最初から要件に合わせて設計することが大切です。
外国人を派遣労働者として雇用できますか?
就労が認められる在留資格を持ち、派遣先での業務がその在留資格の範囲内であれば可能です。特定技能のように派遣での受入れが一部の分野に限られる資格もあります。
人材紹介も行う場合、別の許可が必要ですか?
必要です。人材紹介は職業安定法に基づく有料職業紹介事業の許可が別に必要で、派遣の許可では行えません。
参考・出典
- 長崎労働局 労働者派遣事業許可申請の手引き(令和7年6月) jsite.mhlw.go.jp
- 山梨労働局 労働者派遣事業の許可・更新に関する資料 jsite.mhlw.go.jp
- 厚生労働省 労働者派遣事業の適用除外業務に関する資料 www.mhlw.go.jp
- 厚生労働省 スタートアップ労働条件 事業主向けQ&A(派遣禁止業務) www.startup-roudou.mhlw.go.jp
- 山梨労働局 労働者派遣事業の許可申請に関する資料(PDF) jsite.mhlw.go.jp