2026年10月1日時点の制度に基づいています。
バーチャルオフィスの住所でも、会社の本店として登記すること自体は可能です。ただし、経営・管理ビザでは独立した事業所が求められるため、バーチャルオフィスは原則として認められません。銀行口座や許認可でも不利になることがあるため、目的に合わせてオフィスを選ぶことが重要です。
バーチャルオフィスで登記はできるか
会社法や商業登記法には、本店をバーチャルオフィスに置くことを禁止する規定はありません。登記の手続では、実際にそこで事業をしているかまでは審査されません。
ただし、利用規約で本店としての登記を認めていないサービスもあります。契約前に、登記に使えるかを必ず確認します。
住所の貸与と郵便物の受取・転送を行う事業者は、多くの場合「郵便物受取サービス業者」にあたります。犯罪収益移転防止法の特定事業者として、契約時に利用者の本人確認や事業内容の確認を行い、記録を保存する義務があります。契約の際は、代表者の本人確認書類や会社の登記事項証明書などの提出を求められます。
バーチャルオフィスの利点と注意点
- 利点:初期費用と月額費用を抑えられ、都心の住所を本店にできます。自宅の住所を本店として公開せずに済みます。
- 注意点:本店の住所は登記簿で誰でも確認できます。同じ住所に多くの会社が登記されていると、取引先の信用調査で事業の実態を尋ねられることがあります。
- 注意点:同じ所在場所に同じ商号の会社がすでに登記されていると、登記できません。多くの会社が使う住所では、商号の重複も確認します。
オフィスの種類と影響の比較
| 種類 | 登記 | 経営・管理ビザ | 銀行口座 | 許認可 |
|---|---|---|---|---|
| バーチャルオフィス(住所・郵便のみ) | 可能(規約による) | 原則として認められない | 追加確認を受けやすい | 多くの業種で不可 |
| シェアオフィス・コワーキング(共用席) | 規約による | 独立性の点で難しい | 個別に判断 | 多くの業種で不可 |
| レンタルオフィス(施錠できる個室) | 規約による | 独立性や契約期間で判断 | 個別に判断 | 業種による |
| 賃貸オフィス(事業用) | 可能 | 要件を満たしやすい | 説明しやすい | 要件を満たしやすい |
| 自宅 | 可能(賃貸は契約による) | 2025年10月の改正後は認められにくい | 個別に判断 | 業種により制限 |
表は一般的な傾向です。実際の判断は、契約内容や事業の実態をもとに個別に行われます。
経営・管理ビザの事業所要件
経営・管理ビザでは、日本国内に事業所を確保していることが要件です。出入国在留管理庁は、一定の区画を占め、人と設備を備えて、事業を継続的に行える場所であることを求めています。
- 月単位の短期賃貸スペースや、容易に処分できる屋台などは、要件に適合しないとされています。
- 住所と郵便の受取だけのバーチャルオフィスは、事業所の実体がないため、原則として認められません。
- 共用スペースの1席を借りる形態は、独立した区画とみなされにくいのが実情です。
2025年10月16日に施行された基準の改正で、資本金等や常勤職員の要件が引き上げられ、事業所の実態もより厳しく確認されるようになりました。自宅を事業所と兼ねる形は認められない可能性が高いため、事業用の物件を別に確保するのが安全です。審査では、賃貸借契約の使用目的が事業用か、設備や表示があるかなども確認されます。改正の内容は経営・管理ビザの許可基準の改正で解説しています。
事業所について準備する資料
- 法人名義で、使用目的を事業用とした賃貸借契約書
- 建物の外観、入口の社名表示、室内の机や設備がわかる写真
- 間取り図や、ほかの区画との境界がわかる資料
設立前は会社名義で契約できないため、代表者個人の名義で契約し、設立後に法人名義へ切り替えることがあります。その場合は、事業用として使うことと、法人が使用することを貸主に認めてもらい、書面に残しておきます。
創業支援の特例
国家戦略特区などで外国人の創業を支援する制度では、自治体が認めたコワーキングスペースなどを、一定期間に限り事業所として扱う措置があります。対象地域や条件は自治体ごとに異なるため、個別に確認が必要です。
銀行口座と許認可への影響
銀行口座の開設
銀行は、犯罪収益移転防止法に基づき、法人の実在性や事業の実態を確認します。本店がバーチャルオフィスの場合、事業の実態を示す追加資料を求められたり、開設を断られたりすることがあります。
- 事業所の賃貸借契約書や写真
- 事業計画書、取引先との契約書や請求書
- 会社のウェブサイト、代表者の経歴
口座がないと、取引先からの入金や、社会保険料・税金の引落しの手続が進みません。設立後すぐに口座が必要な場合は、拠点の選び方を慎重に検討します。審査の基準は銀行ごとに異なり、公表されていません。準備の詳細は外国人経営者の法人口座開設をご覧ください。
許認可で求められる事務所の要件
多くの許認可では、営業所や事務所の実体が審査されます。住所だけのバーチャルオフィスでは、許可を受けられない業種が多くあります。
例えば労働者派遣事業では、労働局の資料で、事業に使う面積が20平方メートル以上あることや、他社と混在しない構造であることが求められています。
古物商、宅地建物取引業、有料職業紹介事業なども、独立した営業所や事務所の実体が確認される代表的な業種です。業種ごとの基準は、物件を契約する前に申請先の窓口で確認してください。
税務・社会保険・郵便物で注意する点
- 本店所在地は法人税の納税地となり、所轄の税務署や自治体が決まります。
- 税務署、年金事務所、自治体からの重要な書類は、本店宛てに届きます。転送の遅れで期限を逃さない体制が必要です。
- 本店を移転すると変更登記が必要です。登録免許税は、同じ法務局の管轄内なら3万円、管轄外なら旧所在地分と新所在地分で計6万円です。
- 本店を移転したときは、税務署などへの異動の届出も必要です。
- 従業員を雇うと、社会保険や労働保険の手続でも事業所の所在地を届け出ます。実際に働く場所と届出の住所が違う場合は、扱いを確認します。
バーチャルオフィスの事業者が廃業したり、サービスを終了したりすると、本店の移転を急いで行う必要が生じます。運営会社の実績や、解約時の条件も確認しておきます。
目的に応じたオフィスの選び方
- 経営・管理ビザを申請する場合:最初から、事業用として使える独立したオフィスを借ります。
- 許認可が必要な事業を行う場合:業種ごとの事務所要件を確認してから物件を選びます。
- ビザが不要で、海外本社の連絡拠点として小さく始める場合:バーチャルオフィスも選択肢です。ただし口座開設への影響を考慮します。
経営・管理ビザを海外から申請する場合も、申請の時点で事業所を確保していることが求められます。代表者が日本に入国する前に、物件の契約や内装、設備の準備まで進めておく必要があります。日本側で物件探しや契約手続を担う人を、早めに決めておくと安心です。
外国企業や設立直後の会社は、オフィス賃貸の入居審査で追加の書類を求められることがあります。契約の進め方は外国企業のオフィス賃貸で解説しています。
まとめ
バーチャルオフィスでも登記はできます。しかし、経営・管理ビザ、銀行口座、許認可では事業所の実体が確認されるため、目的によっては最初から独立したオフィスが必要です。後から本店を移すと、登記や届出の手間と費用がかかります。設立前に、ビザ、口座、許認可のどれが必要かを整理し、それに合う拠点を選ぶことが、結果として近道になります。
TIMOAは、提携する司法書士・行政書士と連携し、ビザや許認可の要件に合う事業所の検討、本店の登記、移転の手続までをサポートします。詳しくは日本進出・会社設立のページをご覧ください。
よくある質問
バーチャルオフィスで設立して、後から本店を移せますか?
移転できます。本店移転の変更登記が必要で、登録免許税は管轄内なら3万円、管轄外なら計6万円です。税務署などへの届出も必要です。
レンタルオフィスの個室なら経営・管理ビザの事業所として認められますか?
独立した区画で、継続して事業に使える契約であれば、認められる可能性があります。月単位の短期利用などは要件に合わないとされるため、契約内容が重要です。
自宅を本店にして経営・管理ビザを申請できますか?
2025年10月の基準改正後は、事業所の独立性や実態がより厳しく確認されます。自宅との兼用は認められない可能性が高いため、事業用の物件を別に確保することをおすすめします。
バーチャルオフィスだと銀行口座は作れませんか?
一律に作れないわけではありません。ただし事業の実態について追加の資料を求められたり、開設を断られたりすることがあります。
参考・出典
- 出入国在留管理庁 在留資格「経営・管理」に係る基準省令等の改正 www.moj.go.jp
- 経済産業省 郵便物受取サービス業者に関するQ&A(PDF) www.meti.go.jp
- 神奈川労働局 労働者派遣事業の事業所に関する資料(PDF) jsite.mhlw.go.jp
- 国税庁 No.7191 登録免許税の税額表 www.nta.go.jp